抱える過去 ページ39
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「オールマイトを越えるという義務があるんだぞ。わかってるのか？兄さんらとは違う、おまえは最高傑作なんだぞ！」
通路に響き渡った怒鳴り声に、Aは思わず足を止めた。
遡ること、数分前。
大玉転がしのダメージを回復しようと選手控え室で横になっていたAだが、早くも1試合目の勝負がついたようなので会場へと向かうように指示を受けたのだった。
控え室で寝ながら考えていたのはもちろん焦凍とその父エンデヴァーのことと、そして対焦凍戦でいかにして彼の虚を衝こうかということである。
(騎馬戦でも依然として左は使ってない…)
入学してからというもの、ことあるごとに焦凍が使うのは右、つまり氷の個性だけだった。
はじめは、左の炎の個性をいわゆる奥の手―――ここぞという時にだけ使う秘技という位置付けとして扱っているのかと思っていたAだが、ここ最近の焦凍を見ている限り、どうやらそうではないらしい。
(親子の確執―――万年No.2ヒーローの父親が考えそうなこと……)
まずAが推測したのは、個性婚の可能性だった。
右の氷に左の炎。あまりにも出来すぎている、強力すぎる個性である。
それに加え、焦凍の突出した身体能力ならびに慣れすぎている戦闘に対する身のこなし。
どう見ても、幼い頃から強さを得るためだけに鍛錬を積んできた者の動きである。
父親の個性が炎一択なのに対し、息子の焦凍は炎の対になるともいえる氷の個性をも持った両刀。
大方この推測で間違いないだろうと結論づけ、Aは控え室をあとにした。
炎まで使われると太刀打ち出来ないと思っていたが、彼が氷しか使わないのならばまだこちらにも勝機があるかもしれない。
こちらとしては好都合であるが、それ以上にAは焦凍の事情が気になった。
そして会場へと向かう通路で、例の焦凍の父親、エンデヴァーの怒鳴り声を聞いたのだった。
「それしか言えねェのかてめぇは…」
『！』
焦凍の声も聞こえる。
声だけで、焦凍が怒りを必死に抑えているのがひしひしと伝わってくる。
「お母さんの力だけで勝ち上がる。戦いでてめぇの力は使わねぇ」
"オールマイトを越える義務"
"お母さんの力"
Aは壁に寄りかかって、ふうと一息つき、上を見上げた。
義務なんて、と思った。
『焦凍くんは勝手に押し付けられたんじゃないか…』
焦凍の心に渦巻く悲痛な叫びが、手に取るようにわかる気がした。
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スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
