頼むから ページ25
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「…おまえ、あんな敵の目につくようなことすんな」
『そ、そんな無茶な…！』
パッと顔をあげて、Aは思わず口をつぐんだ。
真剣な瞳がまっすぐAを見つめていた。
強い意志と、少しの揺らぎを宿した瞳に何も言えなくなる。
勝己が自分を心配してくれているのがひしひしと伝わってきた。
鎖骨から首へ手を滑らせ、勝己の手がAの頬に触れる。
「……頼むから」
勝己は初めてAを雄英へ誘ったことを後悔しているようだった。
ヒーロー社会に抑圧され、華やかさの影に押しやられてきた人々。
時代の変遷とともに少しずつ蓄積されていったカースト制度に対する不満のはけ口を敵連合が用意し、それが今、膨大な犠牲を巻き込んで爆発しようとしている。
押し込められてきた不満が、あるいは恨みが今、確かな悪意となってヒーローを潰そうと目論んでいる。
勝己が懸念しているのは、敵のボス格であったあの青年が、小夜の個性に興味を示したことだった。
A組の生徒の素性など、調べようと思えば簡単に割れてしまうだろう。
青年とワープゲート、そして脳無と呼ばれたものの強さは自分の身をもって体感した。
あのオールマイトですらも苦戦する存在。
(…俺は―――)
どこまで守れる、と勝己は己に問うた。
敵連合がこのままあっさり消沈するとは到底思えない。
今回の奇襲こそ失敗に終わったが、次こそオールマイトと雄英高校を潰す手筈を整えて乗り込んでくるだろう。
日常に歪みが走る。
歯車が少しずつ、狂っていく。
勝己にはそんな嫌な予感がするのだった。
『…らしくないね』
勝己の胸に額をよせて、Aが笑った。
『…大丈夫。危ないことしないよ。私が危ないことしたら勝己、守ろうとするもんね。私のこと』
Aの言葉に、勝己は何も言えなかった。
Aは一つ息を吐くと、明るい表情を作って勝己を見上げた。
敵の強さを目の当たりにして意気消沈してしまっている幼馴染を早く元気つけたいと思った。
普段とは打って変わった、小さな子どものように怯えた目を優しく見つめる。
『私頑張って強くなるから。……だから勝己も、もっと、強くなって』
勝己はぐっと唇を噛み締めて窓の外へ視線を移した。
行き場のない思いが胸中を渦巻いている。
守りたい、と思った。
自分を理解してくれるたった一人の存在を。
大切な、幼馴染を。
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スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
