日常へ ページ24
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両脚に重傷を負った出久だけが治療を受けるなか、それ以外の生徒は警察による簡単な事情徴収のあと家に帰されることとなった。
それぞれの思いを胸に帰路につく。
誰しもが心の底から味わった恐怖を、絶望を思い返さずにはいられなかった。
あの時あの場所にあったのは、初めて感じた死への意識だった。
「まもなくホームに電車がまいります。黄色い線の内側に下がってお待ちください」
駅のアナウンス。
雑踏に絶え間なく響く足音。話し声。機械音。
いつもとなんら変わらない日常の風景であるが、そういったことの全てを不思議な思いでAは見つめていた。
これが日常だ。
いつもと変わらない、そしてこれからも続いていくであろう日常。
では、さっきまでのあの体験は何だったのか？
頭も体も動かなくなる感覚。
誰かが殺されるかもしれないという信じられないほどの恐怖。
なぜ自分があの場にいたのか。
なぜ自分でなくてはならなかったのか。
「…あ？なに見てんだよ」
なぜ彼は、ああまで果敢に悪に立ち向かうことができたのか―――。
Aがずっと自分の横顔を見つめていたらしいことに気がついた勝己は、いつもの調子で毒づいた。
たいていの場合そうした勝己の物言いにAはつっかかってくるのであるが、今日は小さくごめんと笑っただけだった。
電車に乗り込む。
ちょうど学校終わりの高校生や大学生で混み合う時間帯とぶつかったようで、満員の車内に後ろの人に押されながら何とか乗ると、ほとんど勝己と向かい合うような格好になってしまった。
加えて勝己がAの背後の手すりを掴んだので、Aは勝己に抱きしめられているような姿勢になる。
その近さで会話するわけにもいかず、Aは目のやり場に困って不自然に視線を泳がせたのちに、じっと俯いたままおとなしくなった。
そんなAを、Aよりだいぶ背の高い勝己は上から見下ろしていたのであるが、ふとした拍子にAの首元―――鎖骨の上あたりに、小さな切り傷ができていることに気がついた。
白い肌に赤く滲んだ傷が対比となって目立っている。
聞かずとも、今日できた傷だとわかった。
勝己はしばらくの間黙ってその傷を眺めていたが、やがて何を思ったか、手すりを掴んでいない方の手でその傷をそっと撫でた。
『―――！？』
「…おまえ」
傷に視線を落としたまま勝己が言った。
「あんま敵の目にとまるようなことすんな」
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スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
