秘密を知る ページ7
.
「全く…"力"を渡した愛弟子だからって甘やかすんじゃないよ！」
「返す言葉もありません…彼の気持ちを汲んでやりたいと…躊躇しました」
保健室に入る直前で、保健室のなかから聞こえてきたのはリカバリーガールの怒鳴り声と、オールマイトの消え入るような小さな声だった。
授業が終わったあと、担架で運ばれた出久を心配に思い保健室に向かっていたAは、すんでのところで立ち止まり、たった今聞こえたリカバリーガールの言葉を頭のなかで反芻させた。
(力を…渡した？)
保健室のなかではまだリカバリーガールとオールマイトが話している。
Aは咄嗟に壁に身を寄せて聞き耳を立てた。
「"個性"の件はあなたと校長、そして親しき友人、あとはこの緑谷少年のみの秘密なのです」
(オールマイト。力を渡す。愛弟子。個性の件。緑谷少年。秘密ーーー)
頭を鈍器で思いきり殴られたような衝撃が走った。
めまいがする。息ができない。
点在していた一つ一つのピースが、綺麗に一直線上に繋がるようだった。
Aは驚愕のあまりに悲鳴をあげそうになったのを、口に手を当てて懸命に堪えた。
足音を立てぬよう細心の注意を払いながら、Aは急いでその場から離れた。
できるだけ保健室から離れたかった。
(オールマイト。力を渡す。無個性。出久。愛弟子。個性の件。秘密。ああ、ああーーー)
走って昇降口まで来たところでようやくAは立ち止まり、壁にもたれかかって大きく喘いだ。
そうだったんだ。出久。そうだったんだ。
出久のこと、勝己のこと、三人のこと、様々な思いが胸中を渦巻いて、気を抜くと泣いてしまいそうだった。
(そっか。だから出久、私たちに言えなくてーーー)
はは、と薄く開いたAの口から力のない笑いがこぼれた。
『嫌だなあ。先生たち…そういう大事なことは、もっと周囲に気をつけて話さないと…』
秘密を知って、だからどうなるんだと思った。
出久の口から直接聞いたわけではない。
直接聞いてないからには、まだ知らないも同然だ。
いつか出久が話してくれるまでは、胸にしまっておこうと思った。
どれくらいの時間昇降口でぼんやり座っていたかわからない。
帰りのホームルームの時間が近づいているのだろう。ふと気がつくと、学校全体がざわつき始めているのがわかった。
Aは立ち上がり、制服のスカートについた汚れを払うと、呼吸を整えて、1年A組の教室へと向かった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
