めぐり愛の季節 (ページ9)

今日:12 hit、昨日:0 hit、合計:38,376 hit

⑨ ページ9

「どういうつもりか知らないけど
俺止まんないからね？」

「わかってる…そのつもりだよ…」

いいよ、今だけ俺を見れくれれば…
心の中を読まれたのか

「俺だけを見て…」

胸が痛い…
俺は…
太輔しか見えてないのに…

「何で…泣くの？」

「えっ…
いや、なんでだろ…
わかんね…」

自分でも気付かないうちに
流れた涙は止める事が出来なくて
拭っても拭っても
はらはらと落ちてくる

「そんなに嫌？
俺の事嫌い？」

「んなわけっ…
嫌いなやつにキス…しねーし…
お前だって何なんだよ！
何で待ってるんだよ、
彼女…いるくせに…」

言うつもりのなかった言葉が
溢れ出てしまった

……

耳が痛いくらいの沈黙の後に
間抜けな太輔の声

「はい？」

「へ？」

「誰の彼女？」

「は？お前のだろが！」

「え、何で？」

「言わせんなよ！！
この前一緒にいたの彼女だろ！！」

太輔は目を本当にわからないって顔で
眉間にしわを寄せて想いを巡らせている

「この前…
ってもしかして店で会った時の！？」

やっと思い出したかバカヤロー
そんな思い出せないって
まさか何人もいるのか、
とすら考えていた

「勘弁してよ、あれ姉貴！」

「は！？ねーちゃん！？
あのキレイな人！？」

「キレイかもしんないけど
マジ二重人格だから！
一瞬でも恋人だと思われた事に
げんなりするわ…」

太輔の表情からして
どうやら本当にお姉さんだった様子

「だからこの前
ねーちゃんとさっさと別れて
ヒロと一緒にって思ったのに
出てっちゃうからさー」

「はぁ！？
なんだよ、マジ…
もう、なんだよー…」

へなへなとその場にへたり込んだ

「俺、勘違い…
てっきり…なんだ
そっか、ねーちゃんかぁ…」

すると
太輔が同じ目線でしゃがみ込み
膝を抱え俺をじっと見ている

「ンだよ…
笑いたきゃ笑え…」

「笑わないから…
確認していい？」

「んあ？確認？」

「あのさ、
ねーちゃんのこと、
彼女って思ったんだよね？」

「うん」

「で、頼んだものも
食べないで店出たんだよね？」

「は、はい…」

「何で？
何で出ていく必要があったの？」

太輔の声が優しすぎて
甘すぎて泣きそうになる

「そりゃ、あの…
邪魔したら…」

「ヒーーロ！！
子供じゃないんだからさ、
期待するよ？」

俯き気味だった顔を
両手で頬を押さえられ正面を向かされる

「き、期待？」

期待してるのはこっちだ
この話の流れに
太輔の目の奥のギラつきに…