�―舒�い ページ1
目でわかるよ…
耳元で囁かれた言葉は
いとも簡単に俺の身体を熱くさせる
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
４月の電車は
新しい香りを連れて
新生活のスタートを思わせる
いつも同じ座席で新聞を読むおじさん
いつも同じ立ち位置で化粧を始めるOLさん
いつも同じドアに寄り掛かり音楽を聴いている学生
こっちも毎日同じ場所にいるから
そりゃなんとなく顔も覚える
それが４月はまるでクラス替えかのように
顔ぶれが一新される
そういう俺も４月から配属部署が変わり
乗る電車の時間を変えた
俺の定位置になったのは４両目、一番奥のつなぎ目側
もたれかかって眠い目を擦りながら
外をぼーっと見ていたり
頭が回転してりゃ本を読んだり
ま、ほとんど携帯いじっちゃってるけど
どこにでもある普通の通勤時間
ある駅で何気なくふと前を見た
凛とした立ち姿に
鼻筋の通った顔立ち
俺をまっすぐ見つめる瞳から
視線を逸らすことができなかった
でもその人は…
俺の乗る電車には乗らなくて…
俺の職場は各駅停車じゃないと停まらない駅
きっとあの人は次の急行に乗るんだろう
偶然かと思ってたけど
それは次の日も
その次の日も続いて
いつからか習慣になっていった
停車するほんの数秒だけ
目を合わせて…
ある時それが
微笑みに変わった
ある時それが
会釈に変わった
俺の中で何かが加速していく
どんな声なんだろう
どんな話し方なんだろう
手に持っている本はなんだろう
どんな仕事をしているんだろう
どんな風に笑うんだろう
恋人はいるのかな
結婚しているのかな
知りたい
知りたい
知りたい
思いが募り
いつしかその数秒は
胸を締め付ける
いっそ降りてしまおうか
でも引かれたらどうしよう
向こうは知らないかもしれない
会釈なんて無意識で
偶然の重なりだったのかもしれない
俺の能天気なただの思い込みだったかも…
そんな葛藤を毎日毎日
積み重ねて１ヶ月が経とうとしていた
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作者名：飛飛
| 作成日時：2019年2月25日 14時
