あっしゅぼーい

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店から離れたところですぐに予約キャンセルの電話を入れた
藤ヶ谷さんが出たらどうしようかと思ったけどそれなら一方的に言って切ろうと思った
幸い別のスタッフだったから、直前のキャンセルすいませんとは言えたはず




なんで…
なんで……




『他にはいないよ、マイコだけ』
『遊びじゃない』




俺は？俺はなんだったの？
わからない、藤ヶ谷さんがわからない…
携帯を操作する手に落ちる滴もそのままに気付けば玉に電話をしていて、休みの日だったのにすぐに家まで駆け付けて来てくれた




玄関に入って俺の顔を見た途端に力強く抱き締めてきた
安心したのかなんなのかしがみついて子供みたいに泣いた
一頻り泣いた後でソファで隣合って過ぎる沈黙を玉が破る




「で？何があったの？」




「俺…付き合ってなかった…っぽい…」




「は？どゆこと？」




「本気……じゃないんだ、俺のことは…」




ただでさえ大きい目をもっとまん丸く開いて玉が聞き返してくる




「本人が言ったの？本気じゃないって本人に言われたの？」




「言われてないけど…」




今日の事を口にすれば更に肯定してしまう気がして玉にうまく説明が出来ない




「だから言ったじゃん、気をつけなって…」




「だって…俺といる時は……俺といる時は思われてるって感じ…っつ…く…」




また涙が溢れてくる
藤ヶ谷さんの声が脳内で響く…




「あ、あぁっ…ごめん…ミツごめん…」




そう言ってまた優しく抱き締めてくれるから、藤ヶ谷さんとは違う香りに包まれることで少しだけ心が落ち着いた




「ミツ？俺、明日藤ヶ谷さんに会ってきていい？」




「え！？玉が！？」




「だって、ミツ話せるの？そんな状態で冷静に話せる？」




「無理……」




「まだ付き合って１ヶ月くらいでしょ？傷は浅い方がいい、俺が話つけてくるから」




「……」




いつもはふわふわなくせに…あまり見ることがない玉の男らしさについ頼ってしまいたくなる…




「今日は俺泊まってくよ」




「え、い、いいよ、そこまでしなくても…」




「いーの！俺がそうしたいの！あ、オムライス作ってあげる！」




そう言ってその日の玉は甲斐甲斐しく俺を甘やかしてくれた




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