あっしゅぼーい

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いつも通り痒いところがないか確認され、慣れた工程がどんどん過ぎていく
終わっちゃう、終わっちゃうよー…




「はい、お疲れ様でしたっ！」




軽くタオルドライされ、気持ちよさにぼーっとしながらも賭けは藤ヶ谷さんの勝ちであることを確信した




「ちぇ、ずりーよ、藤ヶ谷さん水撥ねさせたりしないじゃん…」




拗ねた俺の前に藤ヶ谷さんが少し腰を屈めて近づく
あ、今日の違和感はこの距離感だ…いつもより、近い…




「北山さん？」




「はい？」




返事をすると藤ヶ谷さんの指が目の前でピンッと跳ねて、2、3滴の雫が顔に飛んできて反射的に瞬きをするとガーゼで優しく拭き取られた




「明日、どう？俺早上がりなの」




「これって…」




「俺の負けだね♪」




なんか、ホント……ずりぃ…




その後玉が藤ヶ谷さんにカラーだカットだとされるのは見たくなくて、ちょっと外出てるわ、と店を出た




もう日も落ち始めているのに、肌寒さはそこまでない
まだ少し空気が太陽の匂いがする…
春になったんだなぁ…と近くにあった公園に足を進めた




恐らく昼間は子供で賑わっているんだろう
砂場に忘れられたおもちゃが少し寂しそうに埋もれていた
遊具から少し離れた小さな広場では女の子がスケボーの練習をしている
耳にイヤホンをしながら電話をしているようだった
遠目にもはにかみながら会話をする女の子、きっと相手は片思いの人か彼氏か…




俺にもあんなピュアな時代があったんだけどな…
なんか…藤ヶ谷さんを好きになってからどうしていいかがわからない
スタッフと客という一線の超え方が全くわからないのだ
それに今日玉と引き合わせたことで俺の立ち位置なんてなくなるかもしれない…
でもさっきの賭けはなんだったんだろ…明日一緒にご飯食べられるってことかな




公園にはスケボーのタイヤの音と俺が乗ったブランコ錆びた音だけ
ゆらゆらと身を委ねた




「あーぁ、いつもなら気持ちよく帰れるのになぁ…」




そう言いながら頭だけ上に向けると、ぬっと知った顔が現れる




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