【文スト】『人形の家』第四幕下 (ページ5)

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第四幕　下　5 ページ5

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　なんでこうなったの。

　分からない。

　分からない。

　分からないよ、――――――お姉ちゃん。

・・・

　彼女が書いてくれた地図を確認する為に、1階の控室を探索していた。結局『移動回廊』の件は、囮役を引き受けた彼らがついでにやってくれるということで、私たちはそちらの捜索にだけ集中すれば良かった。

　地図の通り、本棚を調べていたら上手いこと隠し部屋を見つけることができた。地図を描いた彼女に素直に感心しながら、その隠し部屋の捜索に入る。

　隠し部屋の中は武器庫だった。

　火器の類は二人とも詳しくは無かったが、それでもなんだかゴテゴテした刃物や莫迦でかい銃、手榴弾以外にも様々な爆弾のようなものがあることから素人目でも武器庫と分かった。

　時間も丁度良かったし、折角だからいくつか拝借してから書庫に向かおうと、武器を携えて部屋を出たところだった。

ドゴオオオオｫｫーーーーーンｯｯｯ！！！！！！

　すぐ後ろから、耳を劈くような破壊音が聞こえてきたのは。

　次の瞬間には、隣にいたはずの少年の、頭が握りつぶされていた。

・・・

　せつ子が控室に入ったときに目にしたものは、およそ現実とは受け入れがたいほどの猟奇的な光景だった。

　アンビルクからたった数歩のところで仁王立ちする△頭の怪物は、オスヴァルの頭と胴を、文字通り両手で握り潰していた。
　肉が潰れ骨がくだけ、どこまでも混濁としたぐちゃぐちょとした音が耳の裏を這いずるように彼女達の鼓膜から脳内を犯す。
　△様の足下には挽肉が散らばり、もはやどれが内蔵でどれが骨で、どれが血なのかすらも分からない。

　オスヴァルの上半身はもう、人間の原型など留めていなかった。

　腰を抜かしたアンビルクの顔や服にも、オスヴァルの体から噴出した血が飛散している。

「アンビルクさん！」

　だめだ、聞こえてない。

　せつ子はアンビルクに駆け寄り声をかけるが反応は無い。彼女は自身にふりかかる血を気にも留めないで、見上げるものに釘付けになり動けなくなっている。手に持つ銃火器をただただ抱きしめるだけで、恐怖に震えることすらアンビルクは忘れてしまっていた。

　そして△様もまた、人間を壊すのを楽しんでもいるのか、握り潰したオスヴァルを今度はバラバラにちぎり始めた。彼女達の方を気にも留めていない。