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「佐久間さん、こんばんは。
…… お元気ですか？」
久しぶりの手話教室。
「こんばんは… ？ 」
挨拶はいつも通りだけど、お元気ですかなんて初めて言われて驚いて宮舘先生を見てると、
「えっと、すみません。あのふっかさんとの事なんですけど」
「… あ 、はい。あのふっかさんの話ですね」
「こうなったら正直に言いますね。
あなたのお友達の阿部さんとは実は飲み友達でもありまして。たまたま行きつけが同じで、そこで仲良くさせて貰ってるんです」
「阿部ちゃんですよね？ そう。俺も彼にこの教室を紹介してもらったんです」
「ですよね。その阿部ちゃんさんからあなた達の話もちょくちょく聞いていて… 、ろう者になられた後輩さんの話も」
阿部め。
遠慮がちに話してくれる宮舘先生には申し訳なさしかない。
つぎ阿部ちゃんに会ったらご飯3回分は奢らせてやるっ。
「職業柄やはり気になってしまって。その後輩の方はどんな人なんですか？」
そう聞かれて、蓮を思い浮かべる。
「どんな人 … 」
そうだな。
蓮は、
「好きな言葉をくれます」
「好きな言葉？」
「はい。俺の好きな言葉をくれるんです。
今はまだ前みたいに明るく笑えないかもなんですが、彼に会うと励まされてるみたいに元気になれるんです」
それは昔と変わらない。
「そうですか。良い関係なんですね」
「はい」
ふっかと別れてから頻繁に蓮と会うようになった。
明日会える？
今夜ご飯食べよう
あそこ行きたい
ランチしよ
買い物付き合って
誘い文句は色々でお互いから。
用事がない以外は断らないように、用事なんてほとんどないから本当ほぼ毎日会ってるんだけどさ。
蓮と一緒にいるのは楽しい。
「お待たせ」
今日も仕事終わりに待ち合わせをしてご飯を食べる。
『やっぱりまっすぐ見るね』
「なに？なんだよ、それ」
はにかむ蓮に、おかしな奴だなぁって笑う。
「なに食べる？さすがにお好み焼きは飽きちゃった？」
『今日あそこのお店定休日だよ』
「食べる気だったんかよ」
『残念だけど、焼き鳥にする？』
「うん、いいよ。貴族だな！」
手話教室の帰り、
見知らぬ男の人に話し掛けられた。
『初めまして、渡辺翔太といいます。
少し話せませんか？』
あ… 、
手話だった。
そして、名前を聞いてすぐさまわかった。
蓮の、大事な人、だ。
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作者名：chugi
| 作者ホームページ：
作成日時：2023年2月4日 21時
