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「どうかしました？」
久しぶりに出席した手話教室。
ぼうっとしてたら向かいに座った宮舘先生が心配気に見ていた。
「…… すみません。なんか、ちょっと、
絶望で」
「絶望？」
「片思いに、
あ、片思いってどうやるんですか？手話」
「片思い」
「うわ、ざんこく … 届かず落ちて行く」
「片思いがどうかしたんですか？」
「… 全然、大した事じゃないんですけど
片思いになっちゃって、それだけです」
「えっ、ふっかさん？」
「はい、ふっか… え、俺なまえ言ってました？」
「あー… 、前に一度だけ」
「俺、無意識に名前出してました？
はは… 、癖なんです。よく阿部ちゃんに、あ、友達に言われるんです。また無意識にふっか出てたよって」
「あ、はい、それです。無意識のふっかさんです。…… 本当に好きなんですね。
無意識に名前出ちゃうくらい」
「…… っ」
「大丈夫ですか？」
「… はい。じゅ、授業、お願いします」
少ししてから、蓮と会った。
すごく心配してる顔だった。
ごめん。
心配掛けてごめんね。
何度も心の中で謝って、ひとりぼっちの部屋に帰る。
会社では頑張ってなんでもない風にしてるけど、きっと上司にも同僚にも気付かれてて心配掛けてる。
宮舘先生にも。
それを思うと自分が情けなくてやり切れなくなる。
俺、マジでだめだよね… 。
ぼーとリビングのソファで付けっぱなしのテレビを見てるだけ。
画面にはよく見てるお笑い番組。
楽しそうに笑ってる芸人と司会者。
まるで異世界。
気づいたら夜中になってて、お腹空いたなって。
こんな時間だけど、何か食べなきゃ、食べたいって冷蔵庫の中を覗いて、
ふっかが買ったプリンを見つけたら賞味期限が今日だったから、ふっかに教えなきゃって。
また自然と涙が溢れてくる。
会いたい。
ふっかに会いたい。
ちゃんとたつやって呼ぶからさ、
やな事もしないし、
ちゃんと言われた通りにするからさ。
だから、別れるなんて言わないで。
嘘だったって言ってよ。
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作者名：chugi
| 作者ホームページ：
作成日時：2023年2月4日 21時
