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帰宅後、佐久間くんにラインをした。




『会って話がしたい』



だけど暫くしても返信は来なかった。



またあの出版社に行けば会えるかな?

入稿はまだ先だけど、返事が来ない佐久間くんと連絡を取るのには手っ取り早い。


思い立てば早く会いたいと、次の日の夕方に出版社の入り口付近で佐久間くんを待った。


行き交う人の邪魔にならないよう、でも佐久間くんを見つけられるように玄関口の横にある花壇の場所を陣取る。

うん。ここなら佐久間くんを見つけられる。


誰かを待つのは嫌じゃない。
好きな人なら尚更のこと。


佐久間くんのことが好きだったあの頃の自分を思い出す。

まだ、片想いだった時のこと、ダンススクールへ向かう途中、いつも駅の改札口の前で待ち合わせをしていた。


違う中学校だったから下校時間がずれて遅れてくるのはいつも佐久間くんで、待っているのは俺。


改札口を通るピンクのイヤホンをした姿が見えて、いつもの場所で待つ俺を見つけては笑顔になるその顔を見て俺も笑顔になる。

可愛いなぁって思って。

好きだなって改めて思って、また好きになる。

嬉しくて温かい気持ちになって、絶対この人の恋人になりたいって幼心で思っていたっけ。


懐かしくて自然と口角が上がる。


分かってるよ、分かってる。

それを壊したのは俺だって。


だからこそ、佐久間くんには笑ってて欲しい。

そんなこと、俺が望むのは可笑しいかも知れないけど、

悲しませた分、佐久間くんには幸せになって欲しいんだ。


たとえ、幸せにする相手が俺じゃなくても。





佐久間くん。



目の前を通り過ぎる見慣れた人。


咄嗟に腕を掴んだら、



「…… 蓮?」



驚いた佐久間くんの顔は病的なくらい白くて、



「どうしたの?」


元気がないのがひどく心配に思った。



『昨日、ラインしたけど返事がなかったから』


「… あー、ごめん。寝ちゃってた」


『話がしたいんだ』


「ごめん、忙しいから今日は無理」

『時間作って欲しい』

「ラインじゃだめ?ラインでいいじゃん。
メッセージ送っといてくんない?」


『佐久間くん』


「なにっ?」

『顔見て話したい』


「 …… 」


『佐久間くん』



「 …… 今、蓮の顔見て話すのつらい」



だから、ごめん。時間欲しい って。




辛そうにそう言った佐久間くんに、無理強いするなんて出来るわけ無かった。



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作者名:chugi | 作者ホームページ:   
作成日時:2023年2月4日 21時

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