ロイヤルミルクストーリー (ページ47)

今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:40,057 hit

47 ページ47

.

やけど、捕まえて、離さへん。

力は俺の方が上やから。

調理台の上に章大さんを押さえて、更に口づけた。

章大さんの腕が俺の胸を押す。

いやや、抵抗せんといて … ？

「っ、まさ … やっ！」

いややっ… 、

力が緩んだ瞬間、離れた章大さんの左手が頰を打つ。

叩いた章大さんが一番びっくりした顔をしていて、

「仕掛けたのは俺やけど、悪い … っ

お互い、頭冷やそう？」

打たれた頰が痛い。

何も言えない放心状態の俺に、章大さんが濡らしたタオルを差し出した。

俺はそれを受け取って頰に当てる。

静寂が苦しい。

だけどそんな中、ゆっくりと章大さんが話し始めた。

「…… 俺な、大倉には昔こっぴどく振られたんよ」

「え … 」

「そん時にな、俺の恋は終わってたん。いわゆる大失恋ってやつやなぁ」

「やのに、なんでなん？なんで今でも大倉さんと …」

章大さんが小さく笑う。

まるで、泣いてるみたいに。

「 … 求められたら、やっぱ嬉しいんや。
報われんでも、いっときの事とわかってても、伸ばされた手を振り払う事なんて出来ひん」

「それくらい、大倉さんの事が好きやってこと？」

「…… そうやな」

「そ、そんなん …っ、嫌やっ！おれの方がっ、おれの方が絶対っしょーたさんの事すきやもんっ！」

「まさや … 。

お前はほんまアホやなぁ。

でもこんな俺のこと、そこまで言ってくれてありがとうなぁ？」

「 …… っう、ぅぅ」

涙が溢れ出す。

悔しい。

なんでこの人は俺のものにならないんだろう。

「まさや」

渡されたのはさっきプレゼントしたタオル。

「 … っれがあげたのんっ」

「そうや。俺のやからどう使おうがかまへんやろ。 … ちゃんと洗って返せや？」

なんよ、それっ。

「しょーたさんっが、すき… やっ」

受け取ったタオルで顔を拭う。

章大さんが触ったから、章大さんの匂いがした。

好きな、大好きな匂い。

「…… ありがとうな。

ありがとう、晶哉」

頭を撫でられて、その手が背中に下りて … 抱き締められた。

「お礼なんていらんっ、
欲しいのは、しょーたさんだけや … 」

俺も抱き締め返す。

こんなに近いのに、心は遠い。

それがひどく悲しかった。

.