ロイヤルミルクストーリー (ページ3)

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バイトを始めてわかった事。

意外や意外、しょーたさんてツンデレやったんやって。

仕事には真面目で厳しいとこあるけど、ふとしたとき優しさを感じる時がある。

そこが可愛い。

そこやなくても可愛いねんけど！

「なぁ、結局聞かんかったけど、どれが一番美味しかったん？」

ちょうど夏休みやから朝から入れて貰ったバイトの日、
まずは店の前の掃除からやと窓拭きに花壇の手入れと章大さん直々に仕込まれる事に。

俺にしてみれば有難いこと。

だって章大さんと一緒に居れるから。

「なぁって！お前聞いてるん？」

「え、あ、はいっ！」

「…… なんでマルはこんなウドを採用したんか」

「ウド？佐野です！えっと、章大さんっ！
俺、一番好きやなぁって思ったのは苺のミルフィーユでしたっ！」

「聞いてるんかーいっ。つーか、それ定番なやつやし。この店の一番人気な」

「でも納得してない …？」

「なんで？」

「えっ？」

「なんでそう思うん？俺が納得出来てないとかそんなん一言も言うてへんやん」

「 … や、そうかなって思っただけで」

深い意味はなかったんですけど、って恐る恐る答える。

でも、納得出来てないんはなんでやろう？

「 …… ほんまはガトーショコラが気に入ってるねん。一番人気にしたいけど、チョコ系はやっぱ好みが分かれるから」

「中が半熟でフォークを入れたらとろりと出てくるあの濃厚なやつ …！」

甘そうでそうやない、ちょうど口当たりの良い風味に微かな洋酒の香り。

「… もう少し甘めにしたらどうかな？」

「え？」

なんで？って眉を寄せる章大さん。

「ここのお店の客層って若い女の人が多いでしょ？俺みたいな学生もいるし、スイーツ買うのってプレゼントだけとは限らんし、自分ご褒美に甘いの食べたいってなるんちゃうかな… ？」

「 … チョコはビター使ってるん。そうか … 」

考える風な顔で俯いた章大さんに俺は慌てて謝った。

「素人の俺が偉そうにごめんなさいっ」

「や、そんな事あらへん。だって教えてもらわなわからん事ってあるし、若い子の意見聞けて助かるっちゅーか … そや、イートインの話が出てるんやけど、マルー！」

「はいはーい？」

「佐野、ありがとな」

「え、あっ、はい！」

突然の初めての感謝の言葉に頰が熱くなる。

章大さんはバックヤードから顔を出した丸山さんに駆け寄ると何やら話込んで、2人で奥に行ってしまった。

なんか、わくわくした顔してたな。かわいい。

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