perfect world 3

23 ページ23

.

笑っていた2人。


そこには気まずさは見当たらなくて、



──見間違いだったら良かったのに。





「身長デカイやつ追いかけんの死ぬわ … っ 。
お前、なんちゅー顔してんねん」



振り返ると、息を切らした渋谷さんがいた。


「 …… なんで 」


「あんな、ヤスの名誉の為に言っとくわ… 。
あいつは最後まで拒否りよったんやからな？でも、あの男がグラサン取って… 思い出した、モデルの奴や。そいつが脅しみたいな真似しよるからヤスはしゃーなしに車に乗ったんや。
やから、あいつの事疑わんといたってくれ」


「 … そう、やったんですか」

「そうや。やから、そんな怖い顔すんなや」

「怖い顔 … ？」


「なぁ、お前さえ良ければこの後ちょっと付き合えへんか？」

「… いえ、すみません。帰ります 」


「そうか」


一礼をしてその場から立ち去ろうとしたら、


「 … おい」

「？」


「思い詰めて路頭に迷うなよ」


「… なんすか、それ」

「いや、そいじゃーな」


奥歯に物の挟まったような言い方をする渋谷さんの意図を考えない様に、


なんでなん？

章大に対してそんな疑問しかない俺は何もかも諦めて帰宅した。


その晩、暫くしてから掛かってきた章大からの電話。

嘘、吐かれたらどうなってたんやろうって、そんな心配をよそに章大は素直に話してくれた。



「さっきまで亮に会ってたんよ」

「 … うん」

「 忠義？」

「2人がな、車に乗ってんの見たから … 」

「そっか … 。会わへんって言ってたのにごめん。昨日から亮 、大阪に来てて… どうしても話したい事があるからって、」



断れんかってんやろ？

優しい章大。



「謝る事ないよ。そんなんはええねん」


嘘。



「 …ただな、なんで錦戸は会いに来たん？」



本当なら、今からでも会いに行って問い質したい。


「何話したん？」

「お互いの近況とか 、… 婚約情報はガセやってゆってた」

「それだけ？」

「 …… 忠義のこと、話した」

「え？」

「今、ちゃんとお付き合いしてる人がおるって。そう言ったら、わかったって」

「ほんまに… ？」

「 おん。亮とはご飯食べてそれだけで … 」

「そう… 」


章大を信じてる。


でも、

信じきれない自分がいる。


笑っていた2人の顔が頭から離れない。

俺以外にあんな顔、なんで見せるねん？って、
焦れるこの気持ちの矛先をどこに向ければいいのか。


これは明らかに嫉妬。


さすがやなぁ、渋谷さん。



.

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す