変わったようで変わらない、ちょっとだけ変わった君

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『で、やっぱり焼肉じゃん』

網から立ちのぼる煙の向こうのとしみつに言う。

と「好きだら？オシャレなイタリアンより、焼肉」

よく覚えてんな。

『惜しい。あたしはたっけー焼肉じゃなくて、ぺらっぺらの安いタンが好きなの』

分厚い牛タンを箸で挟む。

と「いいから。食べてみ？びびるから」

促され、肉を口に運ぶ。

『ん〜〜、うっま！！』

と「だら？」

『さすが高い肉！旨い！』

としみつが、笑顔で私を見る。

と「ほんと美味そうに食うよな」

『美味しいもん』

と「食わせ甲斐あるわ」



網の上の肉をひっくり返しながら、としみつが聞いた。

と「…元気だった？」

『元気だよ！』

私の仕事の話とか、いつ引っ越したとか、共通の友達とか、会っていなかった時間を埋めるようにたくさん話をして。

としみつの仕事の話は、よくわかんなかった。

相当忙しいのと、相当人気があることだけはよく分かったけど。

相変わらず説明下手だし、私がYouTube見てる前提で話進めるし。

『だから、まったく動画観てないんだってば』

と「なんでだよ。俺のこと気にならんかったの？」

生ビールのせいか。最初会った時より饒舌になっている。

『気にしちゃだめでしょ』

と「なんだ、そっか、観てなかったんだ」

落ち込んでいる様子で下を向いた。

なんかごめん。

と「俺が頑張ってる姿、お前にずっと見せれてると思ってたわ」

なにそれ。

そんなこと思ってくれてたの？

心がじんわり暖かくなる。

『これからは、観るよ』

と「過去の分もな」

『めちゃくちゃ時間かかるじゃん』

はは、と笑うとしみつに目を奪われていると、店員さんがラストオーダーを告げにやってきた。



と「そろそろ出るか」

『うん。明日も仕事だー』

と「あ、まじ？ごめんこんな遅くまで」

『大丈夫！楽しかった！』

笑顔で返す。

本当に、楽しかった。

昔に戻ったみたいで。

でもきっともう会わない方がいい。

彼女できた？とは、結局最後まで聞けなかった。

怖くて。



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