#9 ページ9
.
り「大丈夫？」
とりあえず乗りな、ってりょうくんの言葉に、言われるがまま助手席に乗った。
これ、としくん怒るかなぁ。
りょうくんなら、信用あるし大丈夫かな。
り「としみつと、喧嘩した？」
としみつ、の名前に、また涙が零れる。
大したことじゃないはずなのに、なぜだか涙が止まらない。
り「言いたくないか」
何も言わない私に、そう呟いて、車を発進させる。
り「家まで送るよ、危ないし」
『…ありがとう』
住所を言うと、すぐ着くねって笑うりょうくん。
話してもいいかなって気持ちになる。
『としくん、忙しいんだよね』
り「そうだよね」
『それが不満なわけじゃなくて、嬉しいことなはずなんだけど』
り「うん」
『…寂しい』
寂しい。
初めて口に出した。
寂しい。
寂しかったのか、私。
り「としみつに言ったの？」
『言ってない』
り「言えばいいじゃん。時間作ってくれるよ絶対」
『これ以上、としくんを忙しくしたくないから。言わない』
り「そっか」
『でも、としくんに寂しくないよって言ったら、怒っちゃった』
り「怒って帰っちゃった？」
『…うん』
り「女の子、道端に置いてっちゃだめだなぁ」
そんな話をしているうちに、あっというまに私の家に着いた。
『ありがとう、送ってくれて』
り「としみつには内緒ね。怒られちゃうから」
りょうくんが、いたずらな顔で言う。
『怒らないよ。りょうくんのことは信用してるから』
り「…そうかな」
もう一度お礼を言って、車を降りる。
り「あ、A」
『ん？』
車のドアを閉めようとした手を止める。
り「可愛いね、浴衣。似合ってる」
『…ありがとう』
なにこの紳士。
手を振って、走り去るりょうくんの車を見送る。
ストレートに褒めてくれるんだよね。
りょうくんの彼女になる子は、めちゃくちゃ幸せなんだろうな。
でも私は。
としくんが照れながら、浴衣やべえなって言った顔が頭に浮かぶ。
不器用でも口下手でも、としくんがだいすき。
会いたいな。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1274人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にじます - 見ててめっちゃキュンキュンしまくりでした！としくんがとにかくカッコよすぎました！ありがとうございます！ (2021年1月29日 2時) (
レス) id: a756719d9f (このIDを非表示/違反報告)
ちょんみる - またそれかよ。からの、一生推してろ。で胸がぎゅん！ってなりました…泣 完結までお疲れ様でした！ (2020年6月1日 23時) (レス) id: 8b6be204f6 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - 素敵すぎました……思わずスクロールして続編探してました笑 (2019年12月15日 3時) (レス) id: de131514da (このIDを非表示/違反報告)
ワイ - あー！終わってしまった、、めっちゃ良い作品でした！ありがとうございました！プロポーズ後の、物語みたいです！ (2019年7月27日 0時) (レス) id: 66a772a320 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっちゅ(プロフ) - ももねさん» ありがとうございます〜！！続編…ネタがたまったら挑戦してみたいです！！ (2019年7月24日 23時) (レス) id: 28ddd181e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゅっちゅ
| 作成日時：2019年7月12日 1時
