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にやにや笑いながら、去っていくりょうくんとミキ。
やられた。
残された、としみつと私。
そっととしみつの顔を見上げる。
なんだか、相当酔っ払ってらっしゃる。
カラオケ中から気づいていたけど、かなり飲んでいる。
としみつは、にこにこ立っている。
か、可愛い。
『どーする…?』
恐る恐る聞く。
と「いいっしょ。行こ行こ」
何がいいのか、どこに行くのか、まったく読み取れない返事。
ご機嫌なとしみつは、私の手を引いて歩き出す。
としみつは、まっすぐホテル街に向かって歩いている。
さっき、てつやとナナが消えていった方向。
鼻歌なんか歌っちゃって。
どーする?どーすんの?
これでいいの?
まぁ、いいのかもしれない。
記念に一発、思い出作り。
付き合った人としかしたくないとか、もうそんなにピュアじゃない。
でも、推しへの愛は、今までずっとピュアだった。
イベントで豆粒みたいな推しを見るだけで幸せで。
携帯の中のあなたを、何回も何回も観て。
リプ返もらって飛び跳ねて。
いいの?
『ねぇ、としみつくん』
と「なぁに、Aちゃん」
笑顔で振り向く、愛しい人。
『ごめんね、私、行けないかも』
と「んー?」
『今日ホテル行ったら、もう二度と会ってもらえない気がする』
『これからも会う気なんて、ないでしょ?』
にこにこしていたとしみつが、すっと真顔に戻った。
あぁ、真剣な顔もかっこいいよとしくん。
と「…ごめん」
握っていた手を離す。
と「ちゃんと応援してくれてる子に、ひどいことしようとしてたわ、俺」
あぁーって、髪の毛をかき回した。
と「ごめんね。」
いいよ。
夢見させてくれて、ありがとう。
抱かれても、抱かれてなくても、もうプライベートで会えることなんて無いだろう。
だったら抱かれとけばよかったのに!とミキが脳内で口を尖らせる。
そうなんだよねぇ。
と「タクシー、止めるわ」
道路に身を乗り出して、タクシーを探してくれる。
と「空車が全然いねえなぁ」
『…ごめんね。私がファンじゃなかったら今頃女抱けてたのに』
と「何言ってんの。抱ける女より、ファンのがずっと大事だら」
ちょうど、タクシーが止まった。
としみつは、私をタクシーに乗せて、運転手にお札を渡す。
と「じゃあ、ごめんほんとに」
『ありがとう。これからも応援してる』
と「おう」
笑顔。
タクシーが走り出した。
夢の時間が終わった。
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こは(プロフ) - 胸が…ぎゅーーーってなった……すきです…ありがとうございました…(?) (2020年4月23日 12時) (レス) id: 78e7bcbdad (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - う、うわぁ、ありがとうございます、ちゅっちゅさんの文才ありすぎ羨ましいです、、、頑張ります泣 (2019年7月19日 8時) (レス) id: f2a0ee3fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっちゅ(プロフ) - ぴさん» ぴさんの見てます!(笑)がんばってください(笑)ありがとうございます!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 28ddd181e2 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - 何回読んでもキュンキュンさせられます! (2019年7月13日 1時) (レス) id: af508cf9f8 (このIDを非表示/違反報告)
ハルキ(プロフ) - キュンキュンが止まらない作品でした!ありがとうございます!また新たな作品も楽しみにしております! (2019年7月12日 7時) (レス) id: 08df1f4a97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゅっちゅ | 作成日時:2019年6月12日 1時