ペチカな君と 【東海オンエア】

#26 ページ26

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机に向かっていたたいきが、椅子をくるりと回転させてあたしと向かい合う。

虫「てつや、いい奴だら」

『…まぁ、うん』

虫「僕が、公務員の職を捨ててまであいつを選んだ理由、わかったでしょ？」

『…うん』

ね、とにっこり笑う。



虫「てつやのこと、好きになった？」

『えっ？』

にっこり笑ったまま、あたしの顔をじっと見る。

すべて見透かされてる気がする。

何も言えないでいると、たいきが続ける。

虫「Aはさ、僕のこと好きって言ってたじゃん？でもそれって多分、兄弟愛みたいなもんだったと思うんだよね」

虫「僕への気持ちと、てつやへの気持ち、全然違うだら？」

虫「てつやへの気持ちが、恋だよ」



たいきへの気持ちは兄弟愛で、てっちゃんへの気持ちが、恋？

『よく、わかんない』

虫「そっか」

立ち尽くすあたしから目を逸らし、また机に向かう。



虫「…昔、ギャルだから嫌とか意味わからん理由で振ってごめん」

『なんで今更そんな話…』

虫「僕のこと好きって言ってるAに、それ兄弟愛だわって言ってもわかってもらえないと思ったから」

虫「ギャルは嫌いだけど。Aのことは好きだよ。あ、幼馴染としてね」

好き。その言葉で、数ヶ月前のあたしはめちゃくちゃ舞い上がっていただろう。

今は、じんわり嬉しい。

虫「でも、Aとてつやかぁーって、最初はちょっと嫌で、てつやに諦めりんとか言っちゃったんだよね僕」

『そーなの？』

虫「うん。でも、あんな女遊びしてたてつやがAしか見えてないしさ。そろそろ応援してやらんといかんなって」

よし、と机の上に広げていた書類をまとめて、立ち上がる。

『もう行くの？』

虫「うん、用事は済んだし。僕は帰るよ、彼女の元に」

『そっか』

虫「ほら、彼女の話聞いても、もう全然傷つかんだら？」

たいきには全部お見通し。

『意地悪しないでよ』

虫「Aは、つんつんしてないでもっと正直になっていいんだよ。そんなずっと怖い顔してたら、僕以外Aが何考えてるかわからんよ」



一緒に家を出て、車で帰っていくたいきに手を振る。



恋。恋？

んー、わかんないなぁ。

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