桃色フィルター -数原龍友-

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どのくらいぎゅってしててくれたんだろう。


周平は何も言わないで

ただただ抱きしめてくれてた。






『…ごめん、ありがとう』


周｢…ん。いいよ｣


『…帰る、ね』


周｢…帰れんの？｣






もうさすがに入口の前にはいないと思うけど

もしかしたら龍友くんのお家にあの女の人がいるかもしれない。


想像し出したら止まらないし

もしかしたら彼女さんなのかもって。






周｢お前バカなんだからいちいち余計なこと考えんだろ｣


『……』


周｢今日、俺ん家来れば？｣


『周平の…家？』






周平は大学に入ってから

一人暮らしを始めたらしい。


だから、必然的に2人きり。




…むり、むりだよ。

さすがの周平でも。






『…ううん。気持ちはありがたいけど今日は帰る。ありがと』


周｢…そか。何かあったらすぐ電話でも何でもしろよ。すぐ来るから｣


『…もう、大げさだよ笑 ありがとう、周平』






バイバイってしたら

急に胸がぎゅう…って痛くて苦しくなって

周平の背中にすがりたくなった。



…だめ。

分かってたことだもん。


龍友くんがモテて

周りに綺麗な女の人がいることくらい。



わたしじゃ到底及ばないような、綺麗な人。





でも、想像するのと実際に見るのじゃ全然違う。


体が石になったみたいに重い。



こんな気持ち、初めて知った。






『ただいまー』


母｢おかえり。遅かったね？｣


『周平に振り回された』


母｢楽しかったならいいじゃない〜。早くお風呂入っちゃって｣


『はーい』






お母さんの顔見たら

無性に泣きたくなったから

逃げるようにお風呂に入った。



お風呂あがったらお母さんは寝てて

気を利かせてくれたのか小さくGENEの歌を部屋に流してくれてた。






『はぁ…』






ミユに話したいけど

正直携帯を触る気になれない。


髪の毛を乾かさないままベランダに出た。

夏に変わろうとしているぬるい風が柔らかく吹く。



夏…龍友くんが１回大きなスイカくれたっけ。


去年はずっとツアーだったから

全国各地のお土産買ってきてくれたなぁ。


春はわたしが桜好きなの知ってて

お花屋さんで買ってきてくれた。


秋はちょっと先にある小さい公園で

わたしが落し物した時に一緒に探してくれた。


冬は 風邪ひいたらあかん ってお父さんみたいなこと言って

マフラーとかたくさんくれた。


わたしは、こんなに龍友くんで溢れてるよ。

龍友くんは…忘れてるのかな。




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