桃色フィルター -数原龍友-

filter 28. ページ28

龍友side.




『戻ったら海ね！』


龍｢じゃあ、急いで着替えてな〜｣






うん！って大きく頷いて更衣室に入っていった。


…正直、やばかった。



妹抱っこする感じでAに触れたけど

妹、なんて簡単な言葉で表しちゃいけないような

自分でも不思議な気持ちになった。


必死にしがみついてくるAがかわいくて

思わずいじわるしちゃったり。



Aみたいにちょっとバカで抜けてる子って

何かほっとけないし構いたくなる。




…ほんのちょっと、ドキドキしたよ って言ったら

嬉しい！ って向日葵みたいに笑うんやろな。




どうせ着替えが遅いAを待っててあげようと思って

少し急いで外に出た。






『龍友くん、遅いよ〜』


龍｢あれ、早！笑｣


『だって海見たいんだもん！早く行こっ』


龍｢入れないくせによく好きなんて言えるなぁ〜｣


『そ、それとこれとは別だし…』






…もし、Aが俺の彼女になったら

今と何か変わっちゃうんやろうか。



…なんて、考えるだけ無駄やな。


彼女になるなんて、絶対にだめやから。






龍｢まだ時間あるし、海のそば行く？｣


『え、行けるの？』


龍｢さっき看板見たで｣


『行きたい！貝殻拾おうよ』


龍｢海に行く目的それなん？笑｣






はしゃぐAの背中見ながら

いろんなことを考える。


メンバーのこと、仕事のこと

Aの将来のこと。



考えれば考えるほど

Aは俺の妹でいいってなる。




例えその考えがAを傷つけることになったとしても

きっと俺の気持ちは変わらない。






『龍友くん！海！！』


龍｢風つよ！｣


『ちょっと寒いね〜』






もう5月とはいえ、まだ水辺のそばは肌寒い。


オフショルダーとやらを着てるAは両手で肩をさすってる。



…ほんと、ほっとけへんなぁ。






龍｢風邪ひくで。貸したる｣


『え、龍友くんが寒いじゃん。大丈夫だよ』


龍｢着ててほしいって言ったら？｣


『…着てます』






俺が着てた薄手のデニムジャケット着せた。


サイズが全然違うからダボダボ感がすごい。



落ちないように一生懸命押さえながら歩く姿はかわいくて。


無意識に名前を呼んだ。






｢なぁに？｣






幸せそうに俺のジャケット肩にかけながら笑ってる。


こういう些細なことで

俺のこと好きなんやなぁって感じる。




それが嬉しくて、少し切ない。




.

filter 29.→←filter 27.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す