アソビゴコロ 〜Wedding？〜８【川村壱馬】

お話 ページ5

.




『1ヶ月間ありがとうございました！』






無事に実習を終え、涙ながらに挨拶をした
寂しいと泣いてくれる生徒も居て
すごく幸せな気持ちになれた

花束やかわいい色紙をもらったり
いい先生、いい生徒に出会えたなって心から思えた

星羽くんは教室の隅っこにいて
わたしと目を合わせることはなかった


資料や参考書をカバンに詰めて
職員室で挨拶をして
重い荷物を抱えるようにして校門を出た

ちゃんとした先生になって
またここに戻ってきたいなぁ

そう思いながら振り返ったら
泣きそうな顔した星羽くんが走ってきてた
わたしの前まで来ると
軽く息を整えながら真っ直ぐにわたしを見つめた






星｢最後に来るのが俺で…ごめん｣


『ううん！どうかした？』


星｢いや…何かみんながA先生最後だぞ！ってすごい言ってきて。行ってこいよ！って言われたからとりあえず走ってきた｣


『えぇ、笑』


星｢だから、えーっと…伝えたいことはいっぱいあるんだけど、ん〜…｣






髪の毛をくしゃくしゃ、と乱しながら
真剣な顔をして考える






星｢先生になろうって思ってくれてありがとう。この高校選んでくれてありがとう。いっぱい古典教えてくれてありがとう｣


『星羽くん…』


星｢いつもいつも"星羽くん"っていーっぱい名前呼んでくれてありがとう！｣






眩しいくらいの輝かしい笑顔で
ほんとうにうれしそうに言うから
じわ…と涙が浮かんできた

永遠の別れじゃないのに
なんだろう、不思議な気持ち






星｢みんなには内緒だけど、これからも俺のこと面倒みてね？｣






いたずらっ子のような笑みを浮かべると
わたしの返事を聞く前に またね！ と背を向けてしまった

高校生とは思えないその大きな背中に
星羽くん！と呼びかける

振り返るのと同時に ありがとう！ と大きな声で返した
少しだけびっくりしたような顔をしてから
うん！ と笑って校舎に戻って行った

星羽くんには
出会ってからお世話になりっぱなしだなぁ


荷物を持ち直して
壱馬先輩に電話をかける






壱｢もしもし｣


『たった今終わりました！』


壱｢おー、お疲れ。早く帰って来い｣


『壱馬先輩家にいるんですか？』


壱｢疲れた〜ってあほ面して帰ってくんだろうなって思ったから早く帰ってきてやった｣


『うれしい、好き…っ』


壱｢…だから、早く帰って来い｣






優しい、優しい
実習のお話、壱馬先輩にたくさん聞いてもらおう




.

たまには→←ピュア

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す