アソビゴコロ 〜Wedding？〜８【川村壱馬】

いつもの ページ19

.




お父さんと腕を組んで深呼吸
このドアが開いたら、壱馬先輩がいる
幾度となく想像してきた
ウェディングドレス姿で壱馬先輩の隣に立つこと

そして壱馬先輩との約束を果たすこと
『壱馬』と呼ぶこと

ひとりで練習しては
恥ずかしくなって悶えてたりしたけど
大丈夫、呼べるはず
心の中では壱馬先輩としか呼べないけど
今日という日なら呼べるはず…！

変な緊張感を感じながらドアが開くのを待った
赤い絨毯の先に待っていたのは
グレーの衣装を身にまとい
真っ直ぐにこちらを見据える壱馬先輩だった

目が合うと軽く口角を上げる
それだけで沸騰しそうなくらい熱くなった

かっこよすぎて思わず目を逸らしそうになったけど
今日は負けないんだから
わたしだって綺麗なはずなんだから…！

一歩一歩、お父さんと歩みを進めて
壱馬先輩まであと少しというところ
壱馬先輩がスマートに手を差し伸べてきて
かっこよすぎて泣きそうになりながらその手を取った

…夢見てきた
一番綺麗な姿で壱馬先輩の隣に立つこと
壱馬先輩の隣で胸を張れる容姿じゃないのは十分承知してるから
今日だけはせめて

近づいた距離に心拍数が上がっていく
ただでさえどうにかなりそうなのに
壱馬先輩はそっと耳元まで近づいてきて






壱｢似合ってる｣






そう囁いてくるから
うれしくて
幸せで
好きが広がって
顔は熱いし涙は出そうになるし
どうしたらいいかわかんなくなっちゃった






壱｢百面相やめろ｣


『誰のせいですか…』


壱｢いつものAでいいから｣


『え？』


壱｢かっこつけんなってこと｣






その言葉で
等身大でいいんだって
少しだけ背伸びしていた体から力が抜けた気がした

それからはドラマや映画で見てきた
誓いますかの儀式をして
ついに誓いのキスとやらの時間になってしまった

こんなにかっこいい壱馬先輩とキスだけでも死亡案件なのに
みんなの前でってのも追加されるこのキス儀式なに…！？

壱馬先輩の方を向いたら
お世話になった吉野先輩と岩谷先輩
樹くんや慎くん、バイト先に方がちらちら視界に移る
何より今日来ることが叶った壱馬先輩のお母様
恥ずかしいにも程がある…

幸いわたしのお母さんやお父さんは見えなくて助かった
ユウちゃんに見られるのも恥ずかしい






壱｢…緊張しすぎ｣


『だって…っ』


壱｢…こういう時って俺のことだけ考えるんじゃねぇの？｣






その言葉で更に恥ずかしさが増した場合どうしたらいいのでしょう




.

死ぬまで→←父と娘

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す