父と娘 ページ18
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窓を開けたら緑と色とりどりの花が鮮やかに咲き誇る景色が広がっていた
そよそよと柔らかい風に撫でられて
左右に揺れているのを眺めていると不思議と心が落ち着いた
結婚式挙げようって話をしてから
本当にあっという間に今日が来た
壱馬先輩から贈られたドレスに身を包んで
綺麗に丁寧に仕上げられたメイクとヘアセットはキラキラして
自信を持って 今自分は輝けてる と言えると感じた
こんなに自分に自信を持てたのは
全部壱馬先輩がいたから
壱馬先輩と出会って
強さも弱さも知った
世の中綺麗なものばかりじゃないことも
それから目を背けちゃいけないことも
時には立ち向かわなくちゃいけないことも
…でも、ひとりじゃないことも
過去の自分はまだ好きにはなれないけど
あの心がひとりぼっちだったわたしはどこにもいない
壱馬先輩の隣なら、世界一幸せだと言える
*「失礼致します。お時間です」
『あっ、はい!』
2人で話して
挙式前に会うのは辞めようって決めた
外には先程見たような木々や花が広がっていて
かわいい噴水やおしゃれなベンチが並んだりしてる
その中に小さくて白くておとぎ話に出てくるような教会が建っている
ゆっくりと歩みを進めていくと
一度はこじれた父親が緊張したような面持ちで立っていた
『…お待たせ』
父「…A」
『ありがとうね、今日来てくれ…』
父「待て!何も言うな。もう…」
話を遮られて不思議に思い、父親の顔を見ると
既に目に涙を浮かべていた
『泣いてるの…』
父「いや、何か…感慨深くなったというか…」
『…びっくり』
父「…そうだよな。父親らしいことなんてひとつもお前にしたことないのに、今更な…」
…ほんとうに、そうだよね
小さい頃の父親の記憶といえば
玄関から出ていく背中しかないもん
一緒に遊んだこと、ある?ってくらい
父「でも…嬉しい。ここまで成長してくれたことも、こんな俺を父親だと思ってくれてることも。だから、お礼を言うのはこっちだ、A」
『え…』
父「ありがとう、A。幸せになるんだぞ」
そう言って微笑んだ顔には確かにシワが刻まれてた
…あぁ、そっか
そんなことも気づかなかったくらい顔を合わせてなかったんだ
やっと父と娘になれた気がして
胸がキュ、と締め付けられた
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つぇる - お久しぶりです^ ^本当に1番大好きな作品がまた読めることとても嬉しいです。やめないでいただいた事本当に嬉しいです。大変だと思いますがどうかゆっくりれもんさんのペースで書き続けてほしいです>_<応援してます。この作品と出会わせてくれてありがとうございます。 (2022年1月30日 18時) (レス) @page35 id: 48c076a30b (このIDを非表示/違反報告)
かずみほ - おはようございます。11/7日以来毎週土日の更新を楽しみにしてるんですが、少し悲しいです。早くお話の続きが読みたいです。 (2021年12月19日 10時) (レス) id: 7f4f373820 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(??ω?? )(プロフ) - 主人公ちゃんの可愛さにメロメロ壱馬先輩ですね♡ (2021年10月10日 11時) (レス) @page48 id: e23f31558b (このIDを非表示/違反報告)
noona(プロフ) - 更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年9月12日 13時) (レス) id: 204a7d0311 (このIDを非表示/違反報告)
rii(プロフ) - ここ何日かで一気に読ませていただきました!壱馬の記憶がまた戻った所 昨夜読んでめちゃくちゃに泣いて今日目が凄く腫れてました笑 続きがほんとに楽しみです更新待ってます(^^) (2021年9月8日 19時) (レス) id: 22c06d6a15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れもん | 作成日時:2020年8月10日 2時