アソビゴコロ 〜Wedding？〜７【川村壱馬】

朧月 ページ7

壱馬side.




俺の荒んだ心と比例するように
汚れていく部屋

窓から見えるぼんやりとした月
朧月…って言うんだっけ
雲間から顔を覗かせる度に俺の穢れた部屋を
その朧げな光で照らす

何度も何度も夢を見る
浅い眠りを繰り返していると
あいつが夢に出てくる

泣きながら俺に何かを訴えたり
バカみてぇに明るい笑顔で何かを言ってきたり
リアルすぎて怖くなるような夢を見るんだ

だけど、音がないから
この夢が記憶なのかどうかはっきりしない
夢の中でも声が聞こえないって
何かのいじめなのか？






壱｢はぁ…｣






朧月に照らされた時
ふと携帯が目に入る
あいつだらけの写真や動画が気に食わなくて
触れることを避けていた携帯

何の気なしに手を伸ばす
ロックを解除して写真フォルダを見る

もうどうにでもなれという感情で
いちばん新しい動画を開いた


" …あっ、撮ってますか！？ "

" 痩せるって言ってたのにこんな時間にアイス食ってるから "

" 壱馬先輩が買ってきてくれたのに…。食べたいなら素直に言ってください "

" いらねぇよ "


あいつの…声
…なんだ、案外普通だわ
もったいぶられてるからもっとかわいい声してんのかと思ったのに
でも、見た目通りの…ガキくせー声






壱｢…え、｣






頬に違和感を感じて触ってみたら
無意識に涙を流していたらしい
それは止まることはなくて
次々と流れて落ちていく

…何かが、聞こえてくる
頭の奥の方から、何かが

近いのに遠かった
どんなに手を伸ばしても近づけなかった

雲が月を隠す
暗くなった部屋にずっと思い出したかった声が響いた気がした


" 壱馬先輩っ！ "






壱｢いっ…！｣






また、雲間から月が顔を出す
パチン！と頭の中で何かが弾けて
目の前が白いモヤに包まれる

激痛の中、思い出したのは公園

近づく車…
星羽とケイくんが…いた
助けたかった

2人は…助かった？
俺は…2人を助けられたのか？

事故の時の映像が鮮明に浮かび上がる

視界が霞んでうまく見えなくて
壱馬さん！って声が聞こえてきて
子どもの泣き声がして
俺は…俺はあいつの…






壱｢A…っ｣






Aの名前を、確かに呼んだ




.

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