必死の願い ページ27
.
浅い呼吸を繰り返して
嫌な汗が背中を流れる
ジワジワと皮膚を切った箇所が熱くなってくる
小さな傷でも血は流れて
ポタポタと床に垂れていく
もっとふかくしなくちゃ、だめなの
じゃないと、しねない、おねがい
しなせて
『ふっ…ぅ、ふぇ…っ』
力が入らなくて立っていることさえできなくなった
涙が次から次に溢れてきて
酸素がいきなり肺に入ってきて
思い切りむせた
悲しい？辛い？苦しい？痛い？
全部、違う
壱馬先輩を失ったら…無だ
血が流れてる左手首を見て
生きてるんだって実感した
なんで、ねぇ、なんで？
なんでわたし生きてるの？
その時、真っ暗な部屋にインターホンが鳴り響いた
今…何時？
こんなに真っ暗なのに、誰かな
どこからか無機質なバイブ音が聞こえる
玄関に置きっぱなしにした携帯かな
壱馬先輩からかかってくるわけないもん
出る意味ないよね
鳴り響くインターホンを無視してたら
ガチャ、とドアが開く音がした
…あ、鍵閉めてなかったのかな
泥棒？はインターホン鳴らさないか
不用心だなって壱馬先輩に怒られちゃう
…違う
怒ってくれる壱馬先輩はもういない
もうこの際誰でもいい
わたしをころしてくれないかな
真っ暗で何も見えないけど
誰かがわたしの元に走ってくる
近くに来たその人の腕にすがりついて
必死に声を出した
『ころして…』
『おねがい、しにたいの』
『もう、しなせて…っ』
しがみついた腕がこわいくらいに震えてる
しがみつく力なんてどこから出てるんだろって不思議になるくらい
わたしの必死の願いは
聞き入れてもらえるわけなくて
力強い誰かの腕に抱きしめられて終わってしまった
そこでやっと聞こえた
誰か、の正体の声
弱々しい声の中にしっかりと芯がある
星｢絶対…だめ…！死なせてなんてやらない…っ｣
星羽…くん
何しに来たの？
どうしているの？
星羽くんは、泣いてた
男の子なのにしゃくりあげながら
それでもしっかりと
わたしを抱きしめる腕は強かった
星｢心配でしょうがなくなって…っ、お母さんが帰ってきたから様子見に来たらこれ…？…っざけんなよ、死ぬとかぜってぇー…許さねぇ…っ｣
しばらくわたしを抱きしめてた星羽くんは
小さな傷が無数についた手首に固まった血を洗い流して
わたしの家にあったハンカチで包んでくれた
星｢とりあえず…。Aせんせ、帰ろ？｣
どこに？って聞く前に
意識がなくなった
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2244人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ももか(プロフ) - 妖精さんの話の時涙が気づいたら出てました(>_<) 続きが気になりすぎます！！更新楽しみにしてます^_^ (2020年5月9日 21時) (
レス) id: 493174924c (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 更新ありがとうございます^_^早く壱馬先輩が思い出しますように！！！（；＿；） (2020年5月3日 16時) (レス) id: f088a0a7b8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 更新ありがとうございます！また読みながら泣いちゃいました(笑)主人公ちゃんも辛いし、壱馬先輩も辛いし..早く幸せになれますように！！ (2020年5月3日 13時) (レス) id: 3116574168 (このIDを非表示/違反報告)
もえかず(プロフ) - 続き気になります！早く思い出してほしい(；д；) (2020年5月3日 6時) (レス) id: 50a1bb95a0 (このIDを非表示/違反報告)
蟻ちゃん(プロフ) - 更新ありがとうございます！続きが気になり過ぎます！ (2020年5月3日 3時) (レス) id: 514b8c34c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れもん
| 作成日時：2020年3月10日 18時
