アソビゴコロ 〜Wedding？〜６【川村壱馬】

お願い ページ26

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ひとりぼっちの家に帰ってきて
電気も点けずに玄関に座ってた

吉野先輩の話聞いてから
どうやって帰ってきたか記憶がない


高2からの記憶がないって言った
お医者さんは
大切な記憶ほど強く想いすぎて無くしやすい
なんて言ってたけど

何それ、全然うれしくないよ

ちょうどわたしと出会った頃
それからの記憶がないなんて
壱馬先輩…ちょっとひどすぎじゃないですか？

せめて出会った時くらいのことは覚えててよ
こんな女いたな、って
うるせぇ女だな、って
そのくらい思っててよ

完全に存在を無くすなんて…どうしてそんな残酷なことするの？

吉野先輩曰く
高1の壱馬先輩はまだ少し荒れてた頃らしい
誰にも心を開かずにいた、あの頃

他に後遺症とかは残らないって言ってたから
それに関しては安心した

でも…わたしこれからどうしたらいい？
吉野先輩は 思い出せるように俺らで何とかする って言ってくれたけど
思い出す確率は何とも言えない、本人次第
ってお医者さんが言ってたよ

このままずっと思い出さなかったら
離婚するしかなくて
わたしだけが壱馬先輩とのこと引きずって
おばあちゃんになるまで
死ぬまで
苦しみながら過ごすようになるのかな

…こんな時、少女マンガなら
もう1回初めからがんばる！とか
また好きになってもらえるようにアタックする！とか
前向きで、明るくて、かわいいこと言うんだろうな

ごめんね、壱馬先輩
わたしそういうかわいい女の子じゃなかったみたい

だって、死にたいもん

壱馬先輩に必要とされないなら、わたしなんていらない
壱馬先輩に愛されないなら、存在してる意味がない

壱馬先輩の中でわたしが生きてるから強くいられたのに
壱馬先輩の中のわたしは、死んだ

だったら現実で死んだって何も変わらないでしょ？
わたしが死んだら悲しむのかなぁって思う人
何人かいるけど
片手で数えられるくらいだよ？

そんな人間、いらないでしょ？

こんなに重い女に愛されてたから
壱馬先輩疲れちゃったかな

それで壱馬先輩が幸せになるなら、それはそれでいいかもね


携帯の画面をつけたら
暗闇にモヤァっとした光が広がる

【一人 死に方】

…いろいろあるんだなぁ
まとめサイトで見つけた簡単な方法
カッターを取り出して手首に当ててみる

ヒヤ…とした感触が全身に広がってく
…切れば、辛いのも終わる
そう思うのにカタカタ震えてうまくいかない

小さな傷が増えていくだけ
どうして、どうして…
お願い、わたしを楽にしてよ…っ




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