秘められた恋が叶うまで【G's】

ギター ページ48

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亜嵐くんの彼女になれて
今この瞬間こそが幸せだと思って疑わなかった

一緒に寝る って言ったのに
それはだめ って亜嵐くんが許してくれなかった
無意識に噛んじゃったら嫌だから って
いつもふざけてるのに
こういうところはしっかりしてる

だから自分の部屋に戻って寝ようとした
だけど寝付けなくて
枕元に置いておいたスマホを見た

…もう寝たよね

練習で疲れてるもん
こんな夜中に亜嵐くんに連絡しちゃいけない
しかもすぐそこにいるのに

お菓子でも作っちゃおうかな
この前奮発していろんなもの買ったから
クッキーとかなら作れそう

作ったら明日、みんなにあげるの
亜嵐くんだけちょっと特別にして
みんなに

部屋を出てキッチンに立つ
夜にリビングに来ると
だいたい裕太くんに会ってたけど
さすがに今日は会わないよね
家にいたから休んでるはず

…昼に変な態度とっちゃったの、怒ってるかな

クッキーの材料混ぜながら考えてたら
バタン、と玄関が閉まる音が聞こえた
隼くん…かな？
夜帰ってきてなかったから
たぶん隼くん

小走りで玄関に行ったら
自室に向かう隼くんの背中が見えた
いつも背中にあるギターがない






『おかえりなさい…っ』


隼｢…っ、びっくりした。まだ起きてたの？｣


『寝れなくて、気分転換』


隼｢…幸せそうだね｣


『え？』


隼｢ありがと。亜嵐くんも喜んでるでしょ｣


『はや、と…くん？』


隼｢俺も、うれしい｣






うれしい、という言葉とは裏腹に
眉を下げて悲しそうに笑った

見たことのない隼くんの表情に戸惑って
聞きたいことひとつも聞けなかった

噛み合わない隼くんとの会話
まるでわたしになにかあったことを知ってるかのように話す
隼くんはいつもそう
絶対に話さなくちゃ知るはずのない情報を
深くまで知ってるかのように話してくる

やっぱりこれは
隼くんの特殊な能力なんだろうか

自室に行ってしまった隼くん
ギターを持っていないのがどうにも引っかかった
嫌な予感がして
アウターも着ずに外に飛び出した




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