秘められた恋が叶うまで【G's】

ずるいよ ページ43

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『…っ、ごめんなさ…！』






裕太くんに変なこと見せちゃった
やだ、お願い
何も見てないふりして離れて

お願いだから






裕｢…Aちゃん？｣






少し鼻にかかった声が
弱々しくわたしを呼ぶ

裕太くんだって困るよ
いきなり目の前で泣かれたら

ほんとに、いきなり






『なんでもないから…っ。裕太くんはお仕事戻ってください、！』


裕｢…戻れへんって。心配やもん｣


『…あは、やだなぁ。大丈夫です、ランさんたち待ってますよ』


裕｢今は仕事より…｣


『…〜〜っ、あとで…！亜嵐くんに会えば…っ、大丈夫だから…。裕太くんは戻っ…』






それは、ほんの刹那の一瞬だった
冷えてきてた唇に急に熱が集まってきて
まるで燃えるように、熱くて






裕｢…っ、ごめん、！｣






それだけ言い残して、いなくなった裕太くん

…なんで？
今のは、ずるいよ

どうして甘さだけ残していくの？

裕太くんが触れた部分に手を添える
別に熱は持ってないのに
感じる熱さが消えない

裕太くんは、何を思ってキスしたの？
時が止まったかと思った

裕太くんの伏せた目が視界に入ってきた時にはもう
唇は触れてて
胸が苦しいほど高鳴って
自分じゃどうしようもないほどに泣きたくなった

裕太くんはランさんが好きなのに
亜嵐くんだって言ってたよ
裕太くんは好きな人がいるから って
なのになんで、ねぇ、裕太くん

パン！と空を切る音が聞こえてグラウンドを見る
亜嵐くんが綺麗なフォームで走ってた

亜嵐くん…見てなかったよね？

なかなか好タイムだったのか
ちっちゃくガッツポーズをして喜んでる

…亜嵐くんには言えない
もし言って、また調子悪くなったら？
わたしが少しずつ変われたのは
紛れもなく亜嵐くんのおかげ

そんな亜嵐くんを悲しませちゃいけない

…なかったことにすればいいんだよね
裕太くんに本当のことなんて聞けないし
事故だったって
何かしらの間違いだったって
そう思えば、大丈夫

初めて感じたこの感情も
永遠のものじゃないから
いつの間にか裕太くんに向いてた気持ちを
亜嵐くんに向くように願うだけ

わたしは、亜嵐くんの隣にいたいの

音を出さないように小さく拍手してたら
亜嵐くんがちょうどそれを見てて
子どもみたいな顔で笑った

この笑顔を曇らせちゃ、だめなんだ
絶対に




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