秘められた恋が叶うまで【G's】

待つから ページ41

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亜｢ここにいてね。トイレとか以外は動かないで｣


『わかってる』


亜｢あとマフラー取んないでね。コートも脱がないで。Aちゃんの匂い消すためだから｣






風邪ひかれたら困るから って着せられたコート
そういう意味があったんだ
ちゃんと考えてくれてる

亜嵐くんって、そういうとこ優しい






『うん。ちゃんとここで亜嵐くんのこと見てる』


亜｢…あー、困ったな｣


『亜嵐くん？』






そっとわたしの肩におでこを乗せて
ふぅ、と息を出した






亜｢…今のかわいかった｣


『え、』


亜｢…キスしたくなった｣


『え…っ、こんな外でだめだよ、！』


亜｢…外じゃなかったらいいの？｣


『あ、えっと…』


亜｢…ふっ、うそうそ。俺いつまでも待つから｣






じゃ、行ってくるね と亜嵐くんはわたしの頭を撫でて練習場に行った

わたしは客席で見学
写真とか動画とか撮ったら怒られるのかな

準備体操してる亜嵐くん見ながら思ってたら
大きい見たこともないようなカメラを持った人が客席にあがってきた

…すごいカメラ、何かの撮影？

あんなカメラで撮っていいなら
わたしも撮っていいかな
あとから亜嵐くんに見せたい
あ、うーん…
亜嵐くんは勝手に撮られるの嫌かな

準備体操を終え、軽いランニングを始めた亜嵐くん
途中でこっちを見てきて
小さく手を振ってくれる

わたしも小さく手を振り返したら
亜嵐くんは微笑んで
よし、 と口を動かした

…わたしの存在で亜嵐くんが元気になれてるなら
やっとわたしの生きてる意味が見いだせる気がする

早くなくならないかな
たまに思い出す、柑橘系の香り






＊｢あの！｣


『え？』


＊｢白濱選手のお知り合いですか？｣






ショートボブのかわいらしい女性
どこかで見たことあるような…？
疑問に思ってたら
目を輝かせて近づいてきた

え、亜嵐くんのファン…？
いや、でも見学は普通の人はできないって言ってたから
何かしらの関係者さん？

何にしても、ここは答えない方がいいと思って
いや…と誤魔化す






＊｢アイコンタクトされてたじゃないですか！｣


『いやいや、気のせ…』






ハッとする
今まさになくなって欲しいと思ってた香りが
鼻をくすぐった

女性を避けるように顔を覗かせたら
いつものヨレヨレのキャップ被って
少し元気のない顔をした裕太くんがそこにいた




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