角砂糖に溶ける夢４【北×樹】

絆 ページ40

北人side.




北｢いーつきー｣


樹｢…北人さん｣






エレベーターで1階に降りたら
エントランスホールに樹はいた

スマホを見るわけでもなく
ただじっと立って、Aを待ってた






北｢ちゃんと話してくれた。Aが｣


樹｢…Aは？｣


北｢部屋で待っててもらってる｣


樹｢そう、ですか｣






…正直、悔しくてしょうがない
おれがもう少しかっこよかったら
もう少し大人だったら
なにか変わってたのかな






北｢…おれに悪い、って思わないでほしい｣


樹｢え、？｣


北｢樹がしたことはもちろん許せないことだし、信用していいか迷っちゃう部分があるのは事実｣


樹｢…はい｣


北｢だけど、おれこうやって元気だし、樹がひとりでいろんなことに耐えて頑張ってきたのも、ずっと悩みながら苦しんでたことも、全部わかってるから｣


樹｢…、｣


北｢まぁ、総合的に見たらおれがいちばんかわいそうなんだけどさぁ〜？｣


樹｢…すいません｣


北｢…ふふ、冗談だよ｣


樹｢Aさんのこと幸せにするって、誓います｣


北｢そうじゃなくちゃ困る｣






瞳に迷いがない
うん、これなら大丈夫

長年の想いを断ち切れる






北｢おれたちさ、やっぱり兄弟だね｣


樹｢なんでですか？｣


北｢同じ人好きになっちゃうとこ｣


樹｢別にそれだけで兄弟ってわけじゃ…｣


北｢えー、なんだよ。いいじゃん｣


樹｢いやいや、笑｣






樹の表情が和らいでほっとする
好きな人たちには笑っててほしいから

ぐ、と拳を樹に向かって突き出す
最初は困惑してたものの
おれの拳を見つめてから
自分も拳を作った

勢いよくぶつかってきた樹の拳からは
決意が伝わってきたようだった






北｢ばっか、いてぇよ！｣


樹｢なめられないように、と思って｣


北｢相変わらずかわいくねぇの｣


樹｢…北人さんってお兄ちゃんのくせに大人気ないですよね｣


北｢えっ！！今、お兄ちゃんって言った！？もう1回、もう1回聞きたい！｣


樹｢なんのことですか、A迎えに行きますね｣


北｢あ〜、照れてんだろ〜｣






うざがる樹がおもしろくて
昔から一緒にいたらずっとこんなだったのかなーって想像した

おれがいて、樹がいて、Aがいて

もう戻れない過去のことだけど
時間はこれからたくさんあるから

おれたちだけの絆、つくれたらいいな




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