アソビゴコロ 〜Wedding？〜３【川村壱馬】

見限って ページ29

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瞬きをする度に涙が落ちて
壱馬先輩の姿が浮かぶ

あんなに好きな人
きっともう一生出会えない

それはそれでいいかな
そしたら壱馬先輩との幸せな記憶だけで生きていける

でも…ずっと覚えてられる？

壱馬先輩の匂いや温もり
仕草や言葉、表情や話し方

時間が経つにつれて
消えていかないかな
記憶が混ざったりしないかな

壱馬先輩が…わたしの中から消えてしまう日がくるのかな






『…ぁ、！』






全身が震え出す
そんなの嫌だ、こわい、こわい

壱馬先輩が全てなのに
わたしの光なのに

助けて、嫌だ、こわいよ

思わずしゃがみ込んで体を抱える
この時間だから
まだ人通りが少なくてよかった

浅くなる呼吸を何とか整えて
立ち上がろうとするのに
うまく力が入らない

そんな時、きゅまちゃん？という
聞き慣れた優しい声が聞こえてきた

この、声…
岩谷先輩…？

顔を上げたら
心配そうに眉を寄せて近寄ってくる岩谷先輩が見えた






『…っ、』






立て、動け足…！

そう思うのに全然力が入らない
岩谷先輩はしゃがみ込むわたしの肩に手を置いて
顔を覗き込んだ






翔｢具合悪いん？壱馬に言、｣


『大丈夫、！…です、』


翔｢…やっぱりや｣






岩谷先輩はわたしの背中を優しくさすりながら
ゆったりとした口調で話した






翔｢壱馬…笑わなくなってん｣


『え、？』


翔｢何かあったんかって聞いてもだんまりやし、ほくちゃんとどないしよって話してたんやけど｣






壱馬先輩が…笑わなくなった？
あんなに楽しそうに笑う人なのに
いろんな笑顔を思い出せるのに

どうして…






翔｢壱馬と…何か、あったん？｣


『……』


翔｢きゅまちゃんお願いや。話して？｣


『…、』


翔｢俺らは…壱馬を助けたい。きゅまちゃんがこんななっとんのも壱馬と何かあったからやろ？｣






岩谷先輩と吉野先輩なら
何とかしてくれるんじゃないか

そう思うけど
そしたら、わたしは2人にどれだけの迷惑をかけるんだろう

迷惑にもなりたくないし
何より話すことで2人が巻き込まれるのがこわかった
もし、本当にあの本庄剛がヤクザとかの関係だったら
いくら2人でも危険すぎる

危険に巻き込まれるのは
わたしだけで十分






『わたしが…壱馬先輩の隣にいるのが苦しくなったんです…』


翔｢…え？｣


『別れ、ました…』






どうか最低な奴って見限ってください

目眩がした
視界が白くなる
岩谷先輩の手の温もりを感じながら
意識を手放した




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