角砂糖に溶ける夢２【北×樹】

脆い決意 ページ24

北人side.




帰りの車内は静かだった
最後の最後できっとこわくて疲れたろうし
はしゃぎ疲れたってのもあって
Aがすぐ寝ちゃったから

おれに身を預けて眠るAが
どうしようもなく愛おしくて
柔らかい手や頬をいじったり
髪の毛や頭に触れたりして
とにかくAだけを見てた

…さっき、おれに駆け寄ってきてくれたAを抱きしめた時
不謹慎だけどすごく嬉しかった

樹じゃなくておれのとこに来てくれたことが
おれがいいって思ってくれたことが
ものすごく、嬉しかった






樹｢…そんな顔もするんですね｣


北｢…見んなよ｣


樹｢見えたんです｣


北｢…樹、さっきAを探しに行ったのって、｣


樹｢北人さんに行かせたら何しでかすか分かんなかったんで。実際、キレすぎて北人さんの本性出てたし｣






…やっぱりそうだったんだ

Aのことだけじゃなくて
ちゃんとおれのことも考えてる

樹は、すごいや






北｢ありが、とう。Aを見つけてくれて｣


樹｢北人さんに頼まれたわけじゃないんで、別に｣


北｢かわいくない｣


樹｢知ってます｣


北｢なんでAが樹のこと好きなのか理解できない｣


樹｢…俺がタイプなんじゃないですか？｣


北｢お前、もう喋んな｣






ねぇ、A
樹はいい奴だけどムカつくよ

Aから直接言われたわけじゃないけど
分かっちゃうよ

好きなんだろうなぁ、って
おれには見せない顔をするから
それこそ狂いそうになるけど
まだチャンスはあると思ってる

Aは戸惑ってる
たぶん慣れないことだらけで
どうしていいか分かんなくて
樹に全部曝け出せないんでしょ？

だったら…全部曝け出せるおれの側にいればいい
どんなAでも受け入れるから
…例え、樹が好きなAでも

すっかり暗くなった空
そろそろ着くというのにまだ起きない
起こすのかわいそうだな
でも、明日は仕事だから１回起きないと大変だよな

マンションからいちばん近いコンビニで
ご飯を買う、という樹

おれとAの分も、とお金を渡す

2人きりになった車内
余りにも無防備な姿に
以前のキスの感触が蘇る

…したい

手は出さないって決めてたのに
脆いおれの決意

親指で唇をなぞっただけなのに
欲が頭を支配する






北｢好き…｣






前より長く、口付けた
薄く開いた唇から漏れる吐息を感じた瞬間に
全部欲しくてたまらなくなる


…はぁ、何やってんだろ
こんなことしても、なんの意味もないのに




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