アソビゴコロ 〜Wedding？〜２【川村壱馬】

いじわるな優しさ ページ16

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家に着き、壱馬先輩はわたしをソファに座らせて
ブラウスの袖をめくり始めた

貼られた絆創膏を指でなぞり
手当てしてもらったばっかりのそれを剥がした

見える真新しい傷
かすり傷だったからもう血は止まってる






壱｢…むかつく｣


『え…？あっ、』






予想外な一言を放ってから
壱馬先輩は傷に舌を這わせた

ゆっくりと舌先でなぞられ
変な感覚がわたしを襲う

壱馬先輩は最後に傷にキスをして唇を離した

その表情は…怒ってる






『壱馬…先輩？』


壱｢むかつく、｣


『なに、が？』


壱｢お前を傷つけていいのは、俺だけなのに｣


『へっ…』


壱｢お前の全部、俺のなのに…｣


『あの、壱馬先輩…』


壱｢…なぁ、そうやろ？｣






壱馬先輩の唇が首筋に当たる
くすぐったさに身をよじれば
逃げられないようにあっさりと固定される

唇は首筋から耳に移動してゆっくりと動く
甘噛みされたら、何も考えられない






壱｢Aは…俺の。…なぁ、そうやろ？｣


『そっ…で、！』


壱｢…分からせないとな。これ、やった野郎に｣






そう言って傷跡を指で触れた

壱馬先輩の指は優しくて
きゅん、と胸が締め付けられた






壱｢…で、なんでこんなことになった？｣


『えっ、と…』


壱｢逃げられると思うなよ。話すまでずっとこのままだから｣


『えぇっ…！』


壱｢俺の言うこと聞けねぇ玩具に…自由はねぇよ｣


『壱馬先輩…っ』


壱｢離さねぇから｣






揺らぐ、気持ち

壱馬先輩に心配も迷惑もかけたくない
だけど、頼ってしまいたい
壱馬先輩なら、何とかしてくれる気がするから






壱｢…なんでもっと早く言わねぇの？｣


『だ、だって…』


壱｢迷惑だと思った、心配かけたくなかった、って言葉は聞き飽きた。うぜぇくらい｣






結局話しちゃったし
…ばれてるし






壱｢…俺にはお前がいるように、お前には俺がいる｣


『…え？』


壱｢その、あれだ…。お互いが…｣


『なん、ですか？』


壱｢…うっせぇ！言わないでも分かれよ！！｣


『わっ、わかりませんよ！』


壱｢無能が…！｣


『むっ…！？』


壱｢だから…｣






壱馬先輩は優しくわたしの頬に触れ
ふっ… と柔らかく微笑む






壱｢無能だから、俺が何とかしてやるよ｣


『壱馬先輩…』


壱｢…礼は前払いな｣


『…礼？』


壱｢一晩くらい、寝なくてもいけんだろ？｣






いじわるな優しさに
わたしは何度も救われた




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