勿忘草が揺れる頃 ４【隼×北人】

flower 156. ページ7

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今日は部活がお休みだけど

ダンス部はあるみたい。


サキも用事あるみたいで

ひとりで帰ることになっちゃった。



下駄箱行ったら

たまたま北人くんと慎くんと鉢合わせ。






慎｢あ、お疲れ様です｣


『お疲れ様、』


慎｢…ひとり、ですか？｣






何でそんなことわざわざ聞くの。


ひとり、って言うのが何となく嫌で

これから友だち来るよ、と嘘をついた。



慎くんは なんだ と言って

先に靴を履いている。


わたしも行こうかと思ったのに

北人くんがそこから動かないから

不思議に思ってゆっくり顔を見ると

切ない顔してわたしのことを見てた。






『ど、したの…？』


北｢A先輩、俺…｣


慎｢北人ー？早く｣






ごめん と慎くんの方を向いて言うと

ちらっとわたしの顔を見てから

靴を履いた。


なに、言おうとしたの？



気になったけど

気にしてないと思い込ませて

家に帰った。




今日は早いからお父さんもお母さんも帰ってない。


部屋の片付けでもしようかな。



まず目に入ったのは

北人くんがくれたチンアナゴのぬいぐるみ。


ベッドにあるのが当たり前になっちゃってるけど

見る度に少しだけ胸の傷が痛い。




小物入れの３段目。

大切なものを入れる場所って決めたところをゆっくり開けたら

クラゲのストラップとクリスマスにもらったネックレスが入ってる。



これももうきっと、つけられない。


北人くんとの想い出は…全部見えないところにしまっちゃおう。




北人くんのカバン、こぶたのストラップも外されてた。


ぶーちゃん、なんて名前つけて

遊んでた頃が既に懐かしい記憶に変わってる。


小さな袋にストラップとネックレスを入れて

大きい袋にチンアナゴを入れた。



それをクローゼットの奥の方にしまう。




…これで、ほんとに終わりかな。


別れよう、の一言もなかったけど

自然消滅…ってやつだよね。



北人くんとの想い出はどれもあたたかくて

思い出すと心が裂けそうになる。




まるで心が泣いてるみたいなの。


だから、しまわなきゃ。

全部。



そして、隼のことを想えたなら

きっとそれが今のわたしにとって正解なんだろう。



だけど、枯れた花は二度と同じように花を咲かせられないように

一度消えてしまった気持ちに花を咲かせることは



とても、難しいんだね。




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