勿忘草が揺れる頃 ３【隼×北人】

flower 122. ページ23

隼side.




今日は終業式。


つまりは冬休みに突入。



ダンスで忙しくて暇なんてあんまりないんだけどねー。






『もう〜…終わんない』






終業式終わったっていうのに

俺とAは丸ちゃんが残した仕事の手伝い。


資料のホチキス止めなんだけど

これがなかなか終わらない。



俺的には…嬉しいんだけど、ね。






隼｢サボんなよー｣


『休憩』


隼｢早く部活行きたいんじゃなかったの？笑｣


『行きたいけどほら見て！こんなに手が疲れてる！』






疲れてる手なんて見ても分かるはずないのに

俺の顔の前に手出してくる。


どれ〜、なんて言いながらその手を掴んでみる。



…ちっちゃい手だな。


想いは消えることなんてなくて

できればもうこの手を離したくないんだ。



でも、この前にした告白…みたいなものは

完全になかったことにされてる。




ちゃんと、好きって言ってないから

いまいち俺がどんな想いで言ったのか理解してないのかも。






『…いつまで握ってるの』


隼｢あぁ、ごめん。あまりにも触り心地がよくて｣


『子どもみたいな手だって言いたいの！？』






確かに指とか短いけどさ〜…って言いながら自分の手を見てるんだ。


やっぱり、かわいいなぁ…。






隼｢…後輩くんとどうなの？｣


『北人くん？うーん…、いろいろ解決してないことは多いけどとりあえずは大丈夫』


隼｢なにそれ？笑｣


『ちゃんとね、好きでいてくれては…いる。クリスマス誘ってくれたの』


隼｢クリスマス…｣






今までのクリスマスは

大山家と小森家で過ごすことが定番だった。


例え誰に誘われても

首を縦には振らなかったのに。



…今年は、後輩くんか。






隼｢はぁ〜、飽きたなぁ｣


『ちょっと早く終わらせようよ〜』






伸びをしながら窓に近づく。


もう日は落ち始めていて

雲が太陽を隠すようにかかってた。




幸せになって欲しい気持ちと

奪ってやりたい気持ち。


この2つを表しているような

そんな空だった。



振り返って作業するAの後ろ姿を見る。


例えば今ここでAに告白して

キスしたらどうなる？



きっと泣いて泣いて

俺のことなんて嫌いになるんだろうな。


でも、触れたい。

毎日想いは募るばかりで。






『…隼？』






後ろから覆いかぶさるように手をついた。


Aがどこにも行けないように。




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