真実はいつも残酷で【文スト】 (ページ21)

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「そんなにムスッとしないでおくれよ。」

「そんな無茶な。」

趣味の服を着させた挙句、其れは話題に出さないという
新手の苛めを受けるわ、仕事を押し付けられるわ、
もう散々だ。

「じゃあ、早速だけど、異能訓練始めようか。
銃の訓練は、専門の人が居るから、
後で連れて行ってあげるよ。」

ありがとうございます、と思ってもいないが呟く。
そんな私を見て、太宰さんは流石に苦笑した。

「そんなに服の事に関して
何も言われなかったのが嫌だったのかい？」

「其処じゃないです。仕事の方です。」

「でもね、マフィアに入ると決めたのは君なのだから
仕事が回ってくるのを拒む権利は君には無い。」

正論で返され、ぐぅの音も出ない。
私が黙り込むと、太宰さんはパンっと手を叩き
さぁさぁ、と何処かの部屋に押し込まれた。

其処は、私が拘束されていた所だった。
余り良い思い出はないから、顔を歪めた。

「一寸我慢して貰えると有難い。」

そう前置きした太宰さんに首を傾げると、
突然肩を掴まれ、壁に押し付けられた。
驚きの余り声も出ないうちに、
金属の音ともに、また壁に拘束された。

「な、何を！」

「簡単だ、外せと頼んでご覧。」

私は外してください、と頼んだ。
でも無駄だった。
太宰さんは外そうという行動を全く見せなかった。

「…ふぅん、矢張り触れたら無効になるか。」

「何が…」

「何故君の異能は私に効くのか。
ずっと考えていたんだよ。」

そう言って少しボウっとしながら
拘束具を外してくれた。
そうして向かい合って置かれていた丸椅子の一つに
太宰さんは腰をかけた。
その目の前に私も座る。

「私の異能、《人間失格》は
触れた相手の異能を無効にする。
然して、私 "自身" にはどんな異能も効かない。
その筈だったのだけれど、君が現れて崩れた。

其処で私は考えた。
今迄私が出会った異能者の中に居た
謂わば "精神操作系異能" を操る者達の発動条件は
相手の体に触れること。

然し、君の場合、相手に触れる必要は無い。
直接神経、精神に働き掛ける。

まァ、そういう事だ。」

纏めると…結局太宰さんの異能の発動条件である
"相手に触れなくてはならない" が
私の異能を阻めない理由、ということか。

「他人の異能が効くという感覚、
初めてで楽しくて堪らないよ。」

太宰さんはニコニコしながらそう言った。
…この人の感覚、一寸周りからズレてる。
そう思った。