10 ページ10
だんだん酔い潰れてきたところでお開きになったこのパーティー。
私はお酒が苦手だからただの観戦だったけど。
「チソン。おーい、」
イリチルのお兄さんたちも自分の宿舎へ帰って行き、他のみんなも自室へ戻って行ったけど、チソンだけが、床で寝ようとしていた。
「そんなとこで寝てたら、体全部痛くなっちゃうよ」
そのあとも声をかけてみるものの返事が来ず、寝息を立てるチソン。
どうしよう...なんて思いつつ、やっぱり弟の寝ている顔は可愛くて、だけど去年よりも大人びてきたなあと感じた。
「“変わりゆく季節を食い止めてあげる”という」
「そんな言葉で、君を引き留めることは出来ないけれど」
多くの季節に出会うであろう君に
この心ひとつを照らしてあげようと思うよ
みんなが好きだと言ったように、私もこの曲が1番にくるくらい大好きだ。
一緒に歌うことはなかったけど、毎日口ずさんでいた。
「ヌナ...？」
「チソン、やっと起きたの？」
「ど、どうしてヌナが、」
「だってずっと起きないんだもん」
「いや、そうじゃなくて。ゆめ、夢なのかな、」
「ふふ、夢に対して夢なんて思わないでしょう？」
「...お酒のせいでついにおかしくなったんだ」
私を見るなり異様に焦るチソン。
頭を抱え込んで自分自身に喋りかける。
だから、夢じゃないのに。今までだって、喋ってたじゃん。
「チソン、」
「ぬ、ヌナ、」
「...夢だよ、チソン。夢だから、大丈夫」
「......よかったぁ」
夢なんかじゃないけど、チソンを落ち着かせるためには、嘘をつかなきゃいけない状況だと思った。
チソンも落ち着いたような雰囲気になる。たぶん、これでよかったんだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キュ | 作成日時：2024年1月26日 23時
