陰キャ生活を送りたかった。 (ページ36)

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#33　安心。(pk視点) ページ36

ぴくと視点───

pk「A!!大丈夫!?」

前々から、Aのお母さんから合い鍵を貰っていたから、
鍵を開けて中に入る。

よほど俺のことを信用してくれているのだろう。

pk「A…?」

リビングへ続くドアが開いていたため、
そこから顔を出して中を覗き込んで、Aの名前を呼ぶ。

するとそこには、ソファにもたれかかる様にして
しゃがみこむAの姿が。

pk「ちょ、大丈夫!?」

『…ぴくと…』

Aは虚ろな目で俺を見た途端、その目から大粒の涙が零れた。

pk「ごめんね、怖かったよね」

『うん…』

俯くAを、落ち着くまで優しく抱きしめる。

しばらくして、Aの涙が収まった。

pk「…もう、大丈夫?」

『…うん…、ありがとう』

Aから離れ、ソファに座らせる。

pk「…またアイツ?」

『…そう。今回は、電話で…』

pk「ああ…」

どうせアイツらのことだから、電話番号も汚い手を使って探し出したのだろう。

『…ごめん…』

pk「別にAが謝る必要なんてないよ。
　全部アイツらが悪いんだし」

まだ不安なのだろう。Aの膝の上にある手が、小さく震えている。

pk「ちょっと待ってて」

俺は立ち上がって、キッチンのほうへ行く。

Aのマグカップに牛乳をいれ、レンジにいれる。

少し経ってから、レンジの中からマグカップを取り出し、
牛乳の中に蜂蜜をいれる。

暖かいマグカップを持って、Aのほうに戻る。

pk「はい」

Aにマグカップを持たせて、ソファに座る。

『あ…、ありがとう』

Aは昔から、ホットミルクに蜂蜜をいれた飲み物が大好きだった。

落ち着かない時などにこうして作って飲んでいるのだ。

マグカップで手を温めながら、ホットミルクを飲むA。

pk「美味し?」

『うん』

やっとほわっとした笑顔を見せてくれた。

話しながらホットミルクを飲んでいると、Aは眠たそうな顔をした。

『…眠い』

pk「そっか。じゃ、俺はそろそろ帰るね」

『…うん』

俺とAはソファから立ち上がり、玄関へと向かう。

靴をはいて、後ろを振り返る。

pk「じゃ、また明日ね」

『あ…』

Aが寂しそうにこちらを見てきた。

俺は微笑んで、Aをふわっと抱き締める。

pk「大丈夫だから、ね」

『うん』

小さい体から離れ、ドアを開けて外に出る。

自然と顔が笑う。

あの涙、寂しそうな目、抱き締めた時に見せる、あの安心したような顔…。

…あのAの姿は、誰にも見せたくない。