“お館様” ページ47
「……」
「やぁ、よく来てくれたね」
今現在、マールドはとある館にいた。
目隠しまでして連れられ、更に何人もの裏方役と思わしき男女に代わる代わる誘導され、なんとか辿り着いたは多分鬼殺隊の本拠地……もしくはリーダーの隠れ家。
ここまでして徹底的に隠された先にいたのは。
顔面の上半分を何かに蝕まれ紫色に焼け爛れたような、瞳の黒目も薄い、しかし穏やかな男だった。
「……アンタが……“お館様”というやつなのか?」
「うん。私は産屋敷家九十七代当主、産屋敷耀哉だよ」
産屋敷耀哉、その声を聞くだけで心がどこか浮ついてしまいそうなほどだ。
丁寧な口調、穏やかな性格、そしてこの声……
成程鬼殺隊全体を動かすことは容易そうな程のカリスマ性が、そしてその裏には信念が見える。
これほどまでの男には未だ出会ったことがない。
「……して、今日はどんな用件で僕を……? もしかしたら今ここでアンタを殺すことになったかもしれないのに?」
「ふふ、それはないよ。そんなことを言ってしまうような人が有言実行する筈もないし……
「……?」
確信めいた言動を不審に感じていたが、一旦スルーして本題に向かう。
「あぁ、君への……改めて名前を教えてくれるかな?」
「マールド。僕の名前はマールド=デターム。」
「そうか。まーるど……でいいかな?」
「あぁ」
彼は一つ咳払いをすると、マールドに真っ直ぐ向き合うようにして言った。
「マールド、君には無惨を倒す手伝いをしてほしいんだ」
「……おうおうおう……鬼殺し組織の頭領がそれでいいのかよ……」
「駄目かい?」
「いや駄目ではないんだが……」
わかっていたこととはいえ、まさか本気で言ってくるとは思えなかったマールドは、多少ばかり困惑する。
彼の瞳を再度見つめる。
その薄い光の奥底、限りなく深い場所に隠されているのは、深い闘志と覚悟。
彼は本気で無惨を倒そうとしており、その為の手段として、
「わかってくれたかな?」
「いや、あの、こっちとしても願ったり叶ったりなんだが……大丈夫なのか? 異例の事態過ぎるだろ」
「大丈夫。私が直々に
「えぇ……」
その貪欲っぷりに思わず引きっぱなしのマールドなのだった。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時