再会 ページ42
「ま……まぁるど、さん……!?」
「よう、久しぶりだな?」
その言葉はカナエと童磨、どちらに向けられたものなのかはわからない。
しかしその声に童磨もまた覚えがあったようで。
「あっ、君! 確か去年無限城に入ってきた子だったよね! いやぁ強かったなぁ……まぁ鬼になっちゃったみたいだけど……ってあそうだ、あのお方あっさり呪い解かれてすっごく機嫌悪いんだよねー」
「……あのワカメの近況報告なんざどうでもいいんだよ」
額に血管を浮かべ、至極嫌そうな表情をするマールドの背後、カナエは彼の言っていたことが全て事実であることを改めて認識し、驚愕していた。
「ま、とりあえずは先にアンタから治させてもらうか」
血鬼術 決意・気炎万丈
手をかざすとカナエの体を無数の炎が纏わりつく。
しかしそれは決して熱くはなく、どころかまるで風呂の湯のように、あるいは春の暖かな日差しのように、カナエを優しく包み込んでいた。
「こ、れは……?」
痛みが引いていく。
肺の痛みもほとんどない。
「ま、流石に全快とまでは行かないか……肺までは戻せなかった、すまんな」
「いえ……大丈夫よ」
いくら強化された血鬼術と言えど、やはりマールドの回復魔法は心許ない。
恐らく柱としての生命線である呼吸はもう使えないだろう。
「……お詫びと言っちゃ何だが……童磨、お前にも借りがあるんだ。全力で焼き払わせてもらう」
「あはは、本気? いくら君でも、日輪刀も無いんだし、夜明けにはまだ時間があるし、そもそも血鬼術だけで俺たちは殺せないよ?」
「上等だよ」
眉を下げてそう挑発する童磨だが、マールドは意にも介さず不敵な笑みを浮かべ、再び炎を生み出す。
「お前のその血鬼術。さしずめ冷気を周囲にばら撒いて吸わせて、肺から体を蝕んでいく……そんなもんだと思ってるが、どうだ?」
「うーん見事に言い当てられたなぁ、ざーんねん」
ちっとも悔しくなさそうに笑いながら首を振る童磨。
その言葉にカナエが目を見開けば、成程童磨の周りはきらきらと光っており何かしらが空中に展開されているのが見える。
「まっ、それだけじゃないけどね」
「だろうな」
童磨は余裕そうに扇子を構え、貼り付けた笑顔を二人に向ける。
火と日を纏ったナイフが一度宙を舞い、マールドの手に収まる。
戦場は今、一瞬の静寂を迎えていた。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時