急転直下 ページ41
それから数週間。
今日もまたマールドは森林を駆けずり回っていた。
「……やけに寒いな」
二月頃なのだろうか、はたまた現在よりも気温が低いのか。
それはわからないがとにかく肌寒い。
しかし、その異変は間違いではなかった。
「……!」
常に飛ばし続けているマールドの魔力が、ある一つの懐かしい反応を返す。
しかし同時に感じたのは柱よりも遥かに強大な鬼の気配。
確か……上弦の鬼とやらだろうか。
「……ヤバくね? 誰か死ぬぞこれ」
その脅威はこの身に染みて知っている。
瞬間、マールドは弾かれるように飛び出した。
急げ、急げ急げ急げ。
稲妻と炎を足に纏わせ、必死に全速力で飛ぶように走る。
「……間に合ってくれ……!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「やぁお嬢さん。今日も月が綺麗だねぇ」
迂闊だった。
油断した。
「俺は童磨。君は?」
今目の前にいるのは上弦の弐の名を持つ鬼。
上弦との遭遇、即ち死。
柱であっても現状太刀打ちすら出来ない相手。
「……あの人は、これを六人相手に戦ってたのね……」
乾いた笑いすら出てくる。
それでも、やらなくてはならない。
「……おや? 連れないね……俺はもう少し話してたいんだけれど?」
「私は、柱だから。貴方をここで斬らないといけないの」
「ざーんねん、君とは友達になれると思ったのに」
「残念ながら、私にはもう友達、いるのよねっ……!」
蝶のように舞い、蜂のように鋭く切る。
息を大きく吸い、斬りかかる……!?
「……カハッ……!?」
「あーらら、痛いでしょ? 辛いでしょ? ごめんねぇ、今救ってあげるから……」
肺を鋭く刺すような激しい痛み。
体温も急激に低下している。
氷? 冷気?
何かはわからないが呼吸の為に奴の血鬼術を吸ってしまったのか?
目の前の鬼が扇子を振り上げる。
あぁ、殺される?
何も出来ずに……?
あぁ、しのぶ……弱い姉でごめんなさい……
死を覚悟し、瞳をぎゅっと閉じたその時だった。
「んじゃ……じゃあね、ッ!?」
直後、凄まじい気配が超高速で近付き目の前の鬼を焼き尽くす。
「熱ぅっ……痛いっ……!? 何……!?」
「えっ……?」
そこに立っていたのは。
「よう、忙しそうで何より……なんてな」
緑色の弓を下ろし、目の前に降り立ったかつて会った唯一の鬼の友人。
マールドであった。
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時