蛇桜に追われて ページ38
太陽が沈みつつある夕時、三つの影が森林を駆けていた。
「何で!? 待ってよ!」
「貴様! 甘露寺を再び誑かす気か!」
「そういう訳にもいかないんだよな……」
止まって話したくとも、今の彼女相手には少々まずいことになる。
あの風格は恐らく柱。
捕まって余計面倒な事になっても良くないし、柱になったばかりの甘露寺が鬼を取り逃がしたとなれば信頼は崩れてしまうかもしれない。
「待って! まぁるどさん……あなたは……!」
「……」
「鬼なんでしょ!?」
「……甘露寺」
……どうやら、既に看破されてしまっているらしい。
振り向き、語り掛ける。
「……だったらどうする?」
「甘露寺! 危険だ、鬼など信用しては……!」
「ううん、伊黒さん、大丈夫よ。」
伊黒、そう呼ばれた男はやはり鬼に対しては不信感を、というか人間に対してもあまり信頼は置いていないようにも見える。
だが……甘露寺には別のようだ。
「それと、まぁるどさん! 私あなたに確かめたいことがあるの!」
「……何だ?」
「あなた……初めて会った時から鬼だったんでしょ!」
「そうだな」
振り返らずに答える。
やはり感じ取っていたらしい。
「じゃあ、あの言葉は本当なの!?」
「本当だよ、全部」
「っ……じゃあなんで……、」
「甘露寺! 鬼の言葉に耳を貸すな!」
「……そういうことだ」
伊黒の反応が普通である。
鬼とは本来人を食う、忌み嫌われるべきもの。
決して気楽に人に関わって良い訳はない。
「……じゃあな」
炎を生み出し、地面に叩きつけて爆発させる。
「待って! 私、あなたにまだ……!」
「僕のことはさっさと忘れて……そこの伊黒、と幸せになれよ」
「……えっ!? そんなっ、私たちはまだ……!」
「はっ……な、何を!?」
にっこりと微笑んで、そのまま爆炎に紛れて姿を消す。
「……あークソ……そろそろ潮時か……?」
身を隠し続けるのも限界が近い。
もうそろそろ表に出るところか……?
などと思案しつつも、また夜が訪れてくる。
まだまだ走らなくては。
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時