ツテ ページ4
まず訪れたのは、いつものアパート。
「木漏れ日アパート」と呼ばれる、多種多様な世界の住人の住まう不思議な世界。
世界の中心、そびえ立つは大きく立派な世界樹、その根元に位置するアパートの管理人の住む場所。
その扉を、ノックした。
「はいはーい?」
少ししてドアが開き、そこからひょっこり顔を出したのは一体のスケルトン。
それは確かにサンズだが、オシストのよく知る、所謂「オリジナル」と呼ばれるサンズとは明らかに違っていた。
着込んでいるパーカーは緑で、その瞳は黄色と緑のオッドアイ。
そして、その頭に被さるのはまっさらな麦わら帽子。
「ネイチャーさん、こんにちは」
「ん、バッグス君っすか。……どうしたんすか? 何かあったんすか?」
ネイチャー。
それが自然や天候を操る彼の名。
ネイチャーはオシストを一目見やるや否や、彼女が何らかの相談をしに来たことを察する。
「ひとまず入ってくれっす。紅茶くらいなら出せるっすよ」
促されるまま中に入り、面会室のソファに座る。
アロマの香りが鼻腔を優しくくすぐるが、オシストの表情は当然ながら浮かない。
「……持ってきたっすよ、レモンティーっす」
「あ、ありがとうございます……」
ネイチャーが着席するのを見つつ、それを口に運ぶ。
紅茶の優しい甘さ、レモンの仄かな酸味と苦味。
少し頭が冷静になったと思う。
「ふぅ……」
「……さて、単刀直入に言うっす。何があったんすか?」
「実は━━」
事情を説明する。
マールドが火事から逃げ遅れた少年を救うために飛び込み、結果いなくなったこと。
その彼を探すため、多くの世界に関われるネイチャー、更にはこの場所に住む者の産みの親である「神」に協力してもらいたいこと。
「……成程……」
深刻そうな表情を浮かべ、暫くしてネイチャーが申し訳なさそうに口を開いた。
「……自分としても、デターム君を探すのには是非協力したいんすけど……自分も彼の所在については何もわからないんすよね……少なくとも知ってる世界にいないっす……申し訳ないっす」
「い、いえ……謝らなくても……」
「それと、
「あぁ、なんてタイミングの悪い……」
遠くから、大きなくしゃみの音が断続的に飛んでくる。
この状態ではまともに表に出ることも出来ないだろう。
「……わかりました。ひとまず、失礼します。協力してくださったこと、本当にありがとうございます」
深々と頭を下げ、そのままアパートを後にした。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時