“ありのまま” ページ29
「……アイツは本当に優しくてなぁ……ずっと一途に愛してくれてんだよ」
「そうなのね! ふふっ、キュンキュンする!」
「その感覚はわからんが……」
彼女の独特な表現に苦笑しつつ惚気るマールドだったが、ふと真剣な顔になり彼女に向き合った。
「……?」
「んでまあ……最初はあんまり自信なかったんだけどな、言われてからちょっと救われた言葉があったんだ」
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交際から確か二日後。
「なぁオシスト」
「なんですか?」
「……本当に僕が恋人でよかったのか……? 何かした方がいいよな……?」
その不安と皆無の自己肯定感の詰まった言葉に、オシストは何てことないように応えた。
「? 私はありのままのマールドさんが好きなんですよ。無理しなくていいですよ」
微笑みながら言ったその言葉に、一体どれだけマールドが救われたことか。
オシストは覚えていないだろうが、それがマールドの心に光を差した。
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「……素敵な人ね」
「まあ、何だ。ありのままの自分を愛してくれる奴ってのはそれだけ大事な人間になるし、そいつがいるだけで自分のことも好きになれる。」
「……うん」
「だから、な。アンタもそんないい奴を探しな。話はそれだけだ……
大将! ごちそうさん!」
「あいよー」
代金を置いてマールドは立ち上がる。
「っ、待って!」
「ん?」
彼女がマールドを呼び止め、振り向く。
「あのっ、名前! 貴方の名前だけ……」
「……マールド。マールド=デタームだ。アンタは?」
「私は甘露寺蜜璃! その……まぁるどさん? また会いましょう!」
「……」
その言葉には応えず、マールドは踵を返す。
後ろ向きに一つ手を振り、店を後にした。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時