桃色の女性 ページ28
隣の席の女性に向き合い、声をかける。
「どうした? 泣いてたら飯も美味くないだろ」
「えっ……」
突然声をかけられ一瞬驚いたような表情の彼女は、それはそれは顔中涙でぐしょぐしょになっていた。
「え、あ、え……? あ、ごめんな、さ……」
「いいから。取り敢えず謝るな。落ち着け」
冷静に諭せば少し落ち着いたようで、顔を拭って少し泣き止んだ。
「……この髪……変じゃないの……?」
桃色に、先端が黄緑になった髪を指して彼女は伏し目がちに問う。
「? どこがだ? むしろ似合ってると思うが」
「……そう……? 嬉しい、わ」
嬉しそうにそう言う彼女の目に、少し生気が戻る。
しかし、すぐにその顔は暗くなった。
「……私ね、言われちゃったの。おかしな髪型で、しかも身体が大きくて気味が悪いって……」
「そりゃまた……」
少し彼女の身体を見てみる。
確かに女性にしてはかなりがっしりとした体つきであり、凄まじく筋肉質であることが見て取れる。
「……フールみたいな感じか」
「? ふぅる……?」
「あぁ、僕の友人の話だ。あいつも特に筋力と食事量が凄まじくてな。だがあいつなりに上手くやれてるらしい」
「へぇ、そんな人が……」
「まー……なんだ。まずは自分のことを好きになってやれよ。あいつは本当に馬鹿だから上手く行ってるが、アンタはまず自分を受け入れたらどうだ?」
いつもいつでも馬鹿やっているあの二人を浮かべて苦笑いするマールドに、彼女は少し笑う。
「……ふふ、ありがとう。私ちょっとキュンってしちゃったわ!」
「お、おう? まぁ元気が出たなら何よりだ」
打って変わって快活な笑みを見せる彼女は、また皿にがっつく。
今度は至極美味しそうに食べていた。
「……あ、そうだ」
「?」
思い出したかのように彼女はマールドの方を向く。
「……何で声、かけてくれたの?」
その質問に、今度はマールドがぽかんとした表情を見せる。
少し困惑しつつ、マールドは答えた。
「え、あー……まぁ、泣いてる女性を放置する訳にはいかないだろ? ……まぁ、それと……」
「それと?」
口ごもるマールドだったが、少し躊躇いながらも微笑んだ。
「……僕の彼女に、少し似てたから……か?」
「……あ、彼女さんいたのね! 詳しく聞かせて!」
「お、おう……」
思いの外食いついてきた彼女に、少しばかりオシストについて語るマールド。
彼女の目にはもうすっかり目映い光が宿っていた。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時