鬼としての生活 ページ27
木の太枝に腰を下ろし、マールドは昇る朝日をぼんやりと眺める。
「……案外なんとかなってるな」
猪の肉を頬張りつつも、少しばかり馴染んできた身体を軽く動かして感覚を修正していく。
雑魚鬼程度なら血鬼術でも吹っ飛ばせる。
その事実を確認した上で、マールドはほぅ、と息を吐く。
「……鬼殺隊、か」
カナエの所属するという鬼狩り組織。
興味はあるのだが、今向かうのは間違いなく自 殺行為に等しい。
日輪刀……が、どれほどマールドに有効なのかはわからない。
藤毒は効果が薄そうだが、直接身体に取り込まされてはわからない。
「……暫くは一人で動くか」
外套を軽く掴み、木の上からひっそりと姿を消す。
視界の先には、見るからに派手な金髪の男が帯刀して歩いているところであった。
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一ヶ月。
マールドの体感ではおよそ一ヶ月が経過している。
体感なのは勿論マールドが時計の類いを持っておらず、正確な日時が把握できていないためである。
「……腹減ったな」
味覚はましになってきたようで、肉料理ならば美味しいと感じられるようになった。
……何故それを認識出来るか?
「おー緑のにーちゃん! 今日も来てくれたか!」
「どーも」
昼間から堂々と飯処に入るマールドの姿は、大きくなった身体以外はまさしく人間の頃と遜色のないものであった。
上位の鬼は人間へと擬態して人間界に紛れ込むことが可能なようだ。
そしてマールドも数日前にこの技術を手に入れたばかりである。
「いただきます」
この時代は、日本でいう「大正」の時代であり、第二次世界大戦の直前な激動の時代。
だからこそ。
この牛鍋が食べられる。
「相変わらずんまいな」
「そう言ってもらえて嬉しいぜ」
「ん、いつも助かる」
資金稼ぎなら適当な肉体労働で賄える。
この身体は疲れ知らずで、とにかく頑健。
肉体労働にはピッタリである。
「……米のおかわりくれ」
「あいよー!」
味こそ微妙なものの、普通の食事も喉を通るようになってきた。
目の前に積み上げられた米の富士山にがっつく中、マールドの視界の隅で桃色の髪の少女が泣きながらかなりの量の食事を平らげているのが見えた。
……泣いている人間を放置など、マールドには到底出来ないのであった。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時