散策開始 ページ25
「しっかしまぁ……どうしたもんか」
日の照らす最中、木に寄りかかりつつ己の手荷物とにらめっこしていた。
「……見つかると不味いから……このコートでも着ておくか」
サシナスに貰った、魔力や気配を遮断するコート。
それを身に付けて、ひとまずは見つかるリスクを軽減する。
「……武器……だよな。」
マールドにとって、鬼への有効な対抗手段はほぼない。
血鬼術……らしきものは使えるようだが、致命傷を負わせることは出来ないだろう。
「……ナイフでも通じなかったしな……魔力はそこそこってとこだが……」
一本の槍を手に取る。
アンダインがくれた、魔力を纏う槍。
「……カナエのやつが持ってた刀は……特効武器なんだろうな」
だがそういった武器も得られない以上は、この不馴れな武器に頼らざるを得ない。
「……やれるだけやるか」
槍を振り回しながら、手に馴染ませつつ走り出す。
「人肉の代わりになるのは……獣肉が簡単か?」
人を食べる訳にはいかない、かといって、多分いけそうな気がするケチャップがいけたとしても明らかに足らない。
「……猪とか……熊でも狩ってみるか」
山へと駆けていく。
適当に魔力を飛ばせば、熊らしき反応が返ってくる。
「よっと……悪いな」
首を柄で一撃、気絶した熊に電流を流して一瞬で絶命させる。
ナイフで皮を剥ぎ、解体していく。
これでも料理経験豊富な男である。
手際はいい。
「……焼くか」
手を熊肉に突きだし、魔力を込める。
そのまま脳内に浮かんだ単語を口にした。
「……血鬼術……」
魔力が、身体の中の何かが昂る。
燃えたぎる炎のように、マールドの中で力が溢れ出す。
「……決意・気炎万丈」
マールドの手のひらから、火球が放たれる。
若干加減して放たれたそれは、的確に熊肉だけを香ばしく焼いていく。
「……割と上手く行ったな」
軽く焦げの乗った、しかし見るからにジューシーそうな肉がその姿を見せる。
見るからに成功だ。
「……いただきます」
合掌し、肉を齧る。
……旨い。
噛めば肉汁が溢れ出し、赤みと脂肪がマールドの口一杯を埋め尽くす。
まともに食事の取れなかった彼にはなんとも言い表しがたい至福の味であった。
「……あ、普通に食えるんだな」
肉、ならば恐らく空腹は満たせると思われる。
ケチャップはあくまで魔力の補給に過ぎない。
こちらを中心にした方が良いだろう。
少し満たされた。
まずはこの世界で生き抜くことを考えよう。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時