目覚め ページ21
「mmm……」
やがて、意識が戻ってくる。
どうやら場所が移動しているらしく、腹の辺りからはひんやりとした硬い何かの感触が伝わってくる。
何か柔らかい布も掛けられているらしく、また正面からはパチパチと火が弾ける音が聞こえてくる。
ついでに人間らしい匂いに、藤の香りも漂ってくる。
「……
目を開く。
どうやら洞窟らしく、ひんやりしているのは岩肌。
己に被さるのは穏やかな色合いの羽織。
目の前で無防備に眠るは黒い服の女性、その腰には刀が差されている。
「……Ah……
立ち上がり彼女に羽織を返したマールドの脳には当然ながら寝込みを襲うなどといった発想がないのであった。
四次元空間から貰ったままあまり着れていない着物、それを取り出す。
「……huh……?」
「……」
マールドの瞳には、彼女が熟睡しておらず寝た振りに近い状態であることがよくわかる。
彼女は少しだけ警戒心を抱いている。
流石に無防備に寝ている訳ではなかったが、マールドが問題視したのはそこではない。
「……
間に障壁を設置し、かつ炎で視覚を遮断する。
女性に男の素肌を見せるのもどうなのか、と今更ながら考慮した結果である。
やはりこの男、絶妙にどこかズレている。
「Ah,
着方を思い出しながらたどたどしくそれを身に纏ったマールドは、やがてバリアを消して姿を見せる。
「OK,ah……
「ええと、外人さん……? 初めまして……かしら?」
「……あ、日本か」
「あ、日本語も話せるのね」
マールドの言語圏は英語である。
しかし日本語の素養はちゃんとある。
言語が通じるなら話は早い。
「……そうだな、どうしたもんか……」
「ひとまず自己紹介でもしましょうか。
私は胡蝶カナエよ、よろしくね」
「……」
柔らかな雰囲気で、敵意は殆ど感じない。
それに気絶していた自分を殺さず避難させた。
信用するには値すると判断した。
「僕はマールド……マールド=デターム。まあ、人間じゃなくなったらしいがよろしく」
この世界で初めての、人間との邂逅であった。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時