呪縛 ページ20
ドサッ。
そんな音が軽い衝撃と共に耳に伝わる。
━━━着地したのか……
そう確信するが、朦朧とする意識と視覚ではそれを把握することは出来ない。
━━━痛い……クソっ、全身が動かない……!
力も入らない。
全身を襲う、ある意味成長痛にも似た激痛に抗うことすら出来ない。
━━━! ……人……か……?
代わりに鋭敏になった嗅覚が、自然の匂いに混じって人の気配を感じ取った、その瞬間だった。
殺せ
━━━は?
唐突に脳に響き渡る、出来ればもう二度と聞きたくない声。
恐らく……あの鬼舞辻無惨とか言う鬼のものだろう。
人を殺して食え、そうすれば強くなれる
涎が溢れてくる。
食いたい、そんな衝動が植え付けられている。
━━━……嫌に決まってんだろクソワカメ
……は?
それでも。
マールドは歯を食いしばり、魂を燃やす。
━━━お前の言葉なんざ聞く道理はねえ……僕はマールド! お前の眷属なんかじゃねえ!
霞んでいてもギラつくマールドの背後、禍々しい気配が広がる。
成程これは奴の呪いかと、マールドはすぐに納得がいった。
それなら。
━━━……全部焼き払えばいい話だよなぁ!
僅かに残った魔力、それを気合で熱へと変え、己の身体ごと呪いを焼き払う。
何……だと……!? 人間風情で私の呪いを打ち払うとは……ありえん……!
焦ったような、驚愕したような声は、もうマールドの耳には届かない。
夜明けが迫る中、天へと伸びる火柱はマールドを埋め尽くす邪心の全てを焼き尽くし跳ね返した。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……流石に無理……だわ……」
文字通り全てを出し尽くし、昇ってきた日に照らされて、マールドはそっと瞳を閉じた。
「……嘘……」
その様子を見ていた、一人の女性がいたことも知らずに。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時